39 ページ40
「そういやAちゃんめっちゃ買い物袋持っとんな。少し持つで？」
断ろうとする暇もなくひょいと荷物を取られた。しかも本や小物などの重いものが入った紙袋を。
迷惑をかけてはならないと自分が持とうとするも彼はずっと持ってくれた。
「気にせんで。女の子に重いもの持たすわけにもいかへんし。なんなら部屋まで送ってくで？」
『ありがたいですが遠慮しておきます。』
本当に迷惑をかけたくない故である。だが、そう思えなかったのか私に少し悲しげな目つきを見せた。
「もしかして最初の日のこと、まだ怒っとる？」
『最初の日？……あぁ、鬱様が私の部屋に侵入してたことですね。』
鬱がAの部屋のベッドで何故か寝ていた日。鬱が全面的に悪いが、Aも鬱の股間を勢いよく蹴ったので彼女にとっても苦い思い出であった。
まさか股間を蹴った相手に荷物を持ってもらうことになるとは、あの時は考えてもいなかった。
「本当にAちゃんに手を出す気で部屋にいたわけとちゃうねん。仕事が嫌でたまたま開いてた空き部屋で寝とっただけなんや。まぁ実際はAちゃんの部屋やったんやけど。そしたら部屋に入ってきた見知らぬ女がいたから、スパイかどうかいっちょ試してやらぁと思ったら…。ほんまにごめんな。」
『そうだったんですね。ですが私はそれ程気にしていないので大丈夫ですよ。』
私も股間を蹴っちゃったので。という言葉は喉の奥ギリギリで引っ込めた。
「ほんま…？」と此方を見つめる彼の手の甲にキスを落とした。
この国での手の甲へのキスの意味は信頼の証。だが頻繁に使われるものではなく、心の底から信頼している相手にだけするもの。
鬱自身もその意味をよく知っていたからか、Aの手の甲に鬱からもキスを落とした。
そこからは他愛もない話をして城へ帰った。
歩いていると老若男女関係無く鬱へ話しかけており、Aは国民から彼が沢山深く愛されていることを改めて知った。
Aの存在はまだ公表されていない為、道行く人は皆彼女のことをもの珍そうに見ていた。
鬱が女と出歩くことは珍しくはないが、今までとはまた違った女であり貫禄があった。
そして、鬱はかなり美形である為隣を歩くAは街の一部の女性達からよく睨まれた。
だが、その度に隣の鬱が冷たい目を向けると、彼女らは尻尾を巻いて逃げていった。
夕日が照らす2人の影は、朝よりも若干近づいたようだった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 256人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
未雨(プロフ) - エモンガさん» コメントありがとうございます。頑張って更新ペース上げてくのでこれからもよろしくお願いします！ (2023年2月26日 23時) (
レス) id: 490941137f (このIDを非表示/違反報告)
エモンガ - 初コメ失礼します！応援してます！投稿も頑張ってください！ (2023年2月25日 17時) (レス) @page30 id: b3274f6834 (このIDを非表示/違反報告)
未雨(プロフ) - 天天さん» コメントありがとうございます。是非是非夢主ちゃん描いてあげて下さい！これからもよろしくお願いします！ (2023年2月15日 23時) (レス) id: 490941137f (このIDを非表示/違反報告)
天天(プロフ) - 未雨さんの書き方大好きです〜！夢主ちゃんの瞳の色も気になるところ！！良ければ描かせてもらってもよろしいでしょうか…？ (2023年2月15日 18時) (レス) @page21 id: bc837922a0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：未雨 | 作成日時：2023年1月24日 23時
