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私とは目を合わせず、
さっきから寝室にこもっている汐恩
今は声をかけない方がいいとわかってるけど
申し訳ない気持ちでどうにかなりそう
ご飯もお風呂も用意できてるけど
今の私には何もできない
リビングのテーブルに並んだご飯を前に
何もせず無言で座る私
食べる気にも、動く気にもならず
そのまま時間だけが過ぎていった
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どれくらい時間が経っただろうか
寝室のドアが開く音がした
汐「A、なにしとん、飯も食わんで」
「…だって」
汐「てか俺もほったらかしにしてごめんな?
直せそうな壊れ方やったから、
夢中で直しとったわ」
あー、腹減った
冷えたご飯が並んだテーブルに座る汐恩
「今、あっためるから待ってて」
汐「俺やる、Aも飯食うやろ?」
私の顔色を窺ってテキパキ動いてくれる汐恩
「ごめん…ありがとう」
落ち込みたいのは汐恩の方だよね
汐「A俺より元気無くしてどうすんねん(笑)
もー直ったから」
私の頭を雑に撫でる彼
汐「今日、風呂入る?」
「え?…うん、食べたら入る」
汐「一緒にって意味やけど、ええの?」
「うん…、
え、?!」
普段絶対にこんなこと言わない彼なのに。
片方の口角だけ、にぃ、と上げて
汐「はいー、決まりましたありがとうございまーす」
いつもの怪獣みたいな声で、
ふざけて私を笑わせてくれた
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「汐恩、」
汐「んー?」
「なんで、怒らないの?」
二人で湯船に浸かりながら、
汐恩に問いかける
汐「俺が怒っても、怒らんくても、
結果は変わらんやろ。
それに、Aはわかっとるやろうし」
素直な子やからな、
優しい顔で
今度はふわりと頭を撫でてくれる汐恩
いつから、こんなに大人になったんだろう彼は
…いつからもなにも、ないか。
何を考えているかわからない時もあるけど
いつも冷静で、優しくて、
相手思いな彼
自分より相手を優先してしまう彼だから
私がもっと、彼のことを優しさで包んであげなきゃ
汐「なに、そんな見んといて」
顔にパシャ、とお湯を掛けられる
汐「Aの悲しんどる顔、見たないから
そのまま笑っとって」
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むかしのはなし ーRuki→←つるぼーは、おこらない ーShion
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作者名:Lynn | 作成日時:2021年11月18日 2時