Luv Bias 〈完結〉

僕たちの、光 【M】 ページ7

「病めるときも健やかなるときも永遠に愛しぬくことを誓いますか」

「誓います」

俊くんの隣で純白のウェディングドレスを着て、永遠の愛を誓いあったのは3年前。



俊くんとは同じ大学で同じ学部だった。

友達がはしゃいでいる中でもいつも穏やかに笑っている彼は、とても誠実そうで、なんだか気になる存在だった。

夏休みに始めたアルバイト先の本屋さんで、俊くんは入学当初からもうすでにアルバイトをしていた。

「あれ、同じ学部だよね？」

「AAです」
「宮田俊哉です」

お互いなんとなく顔は知ってたから、すぐに仲良くなった。

俊くんは、抱いてた印象そのままの穏やかで誠実な人だった。

ただひとつ知らなかったことは。

本屋さんのほかに居酒屋と家庭教師のアルバイトもしてて、毎日すごく忙しそうだった。

「なんでそんなにバイトばっかりしてるの？」

たまには遊びに行ったり飲みに行ったりしたくて、俊くんに聞いたら、思いがけない話をされた。

「俺の両親ね、小さいときに事故でしんじゃって。
だから施設で育ったんだよね。
大学は奨学金とバイトでやってかないとだめだから」

さらっと言われて、何て返事していいかわからない。

「あ、ごめんね？
なんか暗い話しちゃって」

「ううん。
そんな風に見えなかった。
俊くんいつもにこにこしてるし」

「別に自分のこと不幸だとか思ってないんだ。
過去は変えられないけど、未来は自分で変えられるし」

強い人だな、と思った。

この人のそばにいたい、と思った。

付き合ってほしいって言ったのは私からだった。


それからの私たちは、どこに行くのも一緒で、嬉しいことも楽しいことも悲しいことも、たくさん共有してきた。

だけど、ほとんど喧嘩することもなく、仲が良くて。

俊くんとならずっとずっと、そんな日々が過ごせると思ってた。

社会人になって3年目。

「A。僕と結婚してください」

俊くんがそう言ってくれたときは本当に嬉しくて、私は、はい、って何の迷いもなく返事をした。


結婚してからも、穏やかな日々は順調に続いていた。

私は会計事務所の事務の仕事を続けていたけど、料理も洗濯も楽しかったし、自分で言うのもなんだけどなかなかいい奥さんだったと思う。



2年前に息子のハルを産むまでは。

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す