さんじゅうご ページ35
少女が気絶し、徐々にホークスは体の感覚を取り戻していく。しかしAの花火の光によって怪しく光るその目を見ると、動いてはいけないような錯覚に陥る。
「やっぱり、ダメだ」
ギュッとホークスを抱きしめる。切りつけられた翼から血が伝い、Aの着物の袖に染み込む。
「君がいなくなることを考えるだけで、
君が悲しむ顔を考えただけで、
私はどうしようもない奴に戻ってしまいそうになる」
花火の音やパトカーのサイレンの音が遠くで聞こえる。
聞こえるはずなのに、ホークスの耳には彼女の寂しげで、温かくて、自虐的な言葉しか聞こえてこない。
「ずっとそばに居ると決めたのに、肝心な時に限って離れてしまった。本当に最低だ、私は」
ギュッと抱きしめる力が強くなる。動かせるようになった右腕を、ホークスは力なくAの頭の上に乗せた。
「……何言ってるの。Aが来なかったら、どうなってたことか」
「違う……」
「違ってないよ。これは俺のミスだから、そんなに自分を責めないで」
ホークスはゆっくりと立ち上がる。倒れそうになる体をAが支えながら、倒れたら少女の方を見た。
「……殺してないんだね？」
「私がヒーローじゃなかったら、殺してたかも」
パトカーが来ていることに気づいた人々が、花火のことを気にとめず、ざわざわし始めたのが見える。「警察呼んでくれてありがとうね」と笑って言ったが、Aはずっと顔を背けたままだった。
整えられていた髪も崩れ、着物の裾の方も破れていたり血が滲んでいたりした。
(俺のせいでごめん──？また一緒に来よう──？
今、俺はAになんて声を掛ければいいんだ……)
結局、2人はその後一切何も会話をすることは無かった。パトカーが来た後、事情聴取でAは警察署へ。そしてホークスは念の為と病院へ送られた。
少女の言う妹も発見されず、ただの虚言であったことが発覚された。
数日後。2人は元の関係に戻っていた。
「それではホークス、先に失礼しますね」
そう思いたかっただけかもしれない。ホークスはAの後ろ姿を見る度に、かける言葉が見つからなくなる。
細かい破片が刺さったような微細な痛み。それでも日が経つ度に、その痛みは確実なものとなっていた。
『それは私から聞いてはいけない。Aを殺すことになるから』
ある1人の言葉を思い出す。
ホークスはおもむろに外へ飛び出した。
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桜芽杏(プロフ) - えだまめさん» ひぇ〜嬉しい……！！ありがとうございます！！実はガチの趣味で書いていた物をその場のノリで載せ始めたので、こうして好きと思われて読んでくださることにとても喜びを感じます……！クライマックスも近いですが、どうぞ最後までお付き合い下さい！！ (2020年4月18日 18時) (
レス) id: 4e2ed4ed51 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめ(プロフ) - 好き…………好きです…………ちょっと不器用なホークスも可愛いのにカッコイイ夢主も雰囲気が独特なお兄さんもそれぞれを表現している桜芽杏さんの透明感のある文章も全て好きです応援しています…… (2020年4月17日 21時) (レス) id: 4f7195255d (このIDを非表示/違反報告)
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