さんじゅうし〜 ページ34
「ホークス、大丈夫ですか？」
心配しているようにホークスに顔を向ける少女。
「うん、ちょっと小枝がひっかかっただけだよ」
かすかに滲む血を拭う。そうですか、と安心しきったように少女は足を進めていく。
「あ、見えました。あそこが穴場です！」
少女は指さし、暗闇の中で柔らかい一筋の光がさす場所へ走っていく。そこだけ草木はほとんど生えておらず、空を見上げればポツリポツリと星が見える。
「もう少しで花火が上がりますよ」
少女はそう言った。
ホークスは違和感を感じ始める。環境でも彼女でもなく、自分自身に。
(体が重い……？)
少女は人目もつかず、祭りの光も届かない場所で不敵に笑う。
(気のせい、じゃない……！！)
彼は少女が何かを企ん出いることに気づくが、羽が動かせない。そして次第に、全身の体が重くなり自由に動けなくなっていた。
「ねぇホークス、私あなたのファンだったの。
ずっとずっと、幼少期のころから見てた。わざわざ関東から引っ越してきたの。
私ね、ずっとずっとホークスのその赤い翼を剥がしたかったの。
あなたの自由を、個性を、ヒーローとしての象徴を」
饒舌に彼女は語る。まるで狂気に満ちた少女は、膝を付いて必死に羽根を飛ばそうとするホークスに果物ナイフを突きつける。
「私の個性、微弱な毒が出せるの。前もって毒を枝に塗り込んで、あなたの皮膚にすり込ませるために……うふふ、致死量も出せない没個性が、こんなことに役立つなんて」
顔を火照らせたまま、少女はホークスの翼を浅くきりつけた。
ホークスは口も上手く開けられない状態のまま、冷や汗を流す。
(しくじった、どうすればいい、考えろ、考えろ)
腕力でも微弱なホークスに、この状況での勝ち目はない。
少女はナイフを振り上げ、高らかに笑う。
「あはははは、この瞬間、ホークスは翼を奪った私のことを、生涯忘れなくなる
──あぁ、なんて快感なの！！」
花火が打ち上がった。
大きな音は、まるでグロテスクな音をかき消すように。
Aが、少女の顔面を勢いよく蹴りつけ、骨の折れる音をかき消すように。
ホークスの服に絡まっていた細く光る糸は、Aの指先と繋がっている。跡を追って来たかのように、Aは肩で息をしながら倒れ込んだ少女を見下ろした。
「お前を生涯恨み続けるのは、私になったよクソ女」
すると彼女は、動けないホークスにその険しい顔を変えないまま詰め寄った。
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桜芽杏(プロフ) - えだまめさん» ひぇ〜嬉しい……！！ありがとうございます！！実はガチの趣味で書いていた物をその場のノリで載せ始めたので、こうして好きと思われて読んでくださることにとても喜びを感じます……！クライマックスも近いですが、どうぞ最後までお付き合い下さい！！ (2020年4月18日 18時) (
レス) id: 4e2ed4ed51 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめ(プロフ) - 好き…………好きです…………ちょっと不器用なホークスも可愛いのにカッコイイ夢主も雰囲気が独特なお兄さんもそれぞれを表現している桜芽杏さんの透明感のある文章も全て好きです応援しています…… (2020年4月17日 21時) (レス) id: 4f7195255d (このIDを非表示/違反報告)
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