57☆ミラーゾーン ページ7
ゲームセンターを出たAが足を向けたのは、LUNAだった。
入り口の前に行くと、
日美子が道を掃いている。
Aの顔を見て、
見開かれた目が線のように細くなった。
ふたりは一緒に、
玄関から研究所の中へ入る。
そしてAは、現場で聞いてきた話を
所長に訊ねてみた。
「窓に吸い込まれた……
モニターに吸い込まれた……」
「そうなんです。２つの現場で、
似たような証言が残されているんです。
もちろん、誰も信じてないようですけど」
所長はAのメモ帳をめくって、
それをしげしげと眺める。
「普通の人々ならそうだろうな。
もちろん、ボクは違うぞ。
窓にモニター……ふむふむふむ……。
そうか、隠し神ではなく、アレだったのか……」
「アレって……心当たりがあるんですか!?」
とAが目を見開くと、
続けて所長が言った。
「うむ。伸也くんたちは、
２Dゾーンに閉じこめられたと思われる」
「２Dゾーン？な、なんですかそれは」
とAは身を乗り出す。
「２Dゾーンとは、２次元の世界という意味だ。
２次元とは、紙や鏡のような、平らな空間だ」
「紙や鏡……今回の場合は、鏡？」
２D、２次元、それらの言葉は聞き覚えこそあるものの、Aにはあまりピンと来なかった。
「そう。窓やモニターが入り口になっているのなら、閉じこめられた先は鏡の２Dゾーン……これは、ミラーゾーンとも呼ばれている。
光を反射する物を通じ、
そこに引き込まれることがあるらしい」
「引き込まれた人は、どうなってしまうのですか？」
とAは首を傾げる。
すると所長は腕を組み、即答した。
「それは分からん。
一生、２Dゾーンに閉じこめられるとも言われている」
所長はAにメモ帳を返す。
「あのう……」
と日美子が所長を見つめた。
「なんだね、日美子くん」
所長は日美子の方を向き、
アイスティーを口に含む。
「その２Dとか、ミラーゾーンとかいうものが、弁護士の山田先生と、どう結びつくんですか？」
「うむ……そうだなぁ……。
弁護士が２Dゾーンへの入り口を
自由に扱えるとしてだな……」
「そ、そんなことってできるんですか？」
「ヤツが普通の人間ではなく、
２次元から来た２D人ならありえる。
うむ、それなら調査マシンに反応がなかった理由も
分からんではない。
そう、そもそも妖怪など、
いるはずがないのかもな」
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作者名：惠里子 | 作成日時：2019年7月30日 19時
