不見識*3 ページ26
「はぁ……。無駄話は控えろと言っただろう」
ずり落ちそうな眼鏡を中指で直しながら、場の雰囲気を引き締めるように語気を強くして俺を見据える。
「お前には__」
いったん言葉が途切れると、沈黙はまるで決められた運命のように、その部屋に重く腰を据えた。
「…………生徒会側の戦力として、貢献してほしい」
静まり返った生徒会室に、きっぱりとした口調で放たれた思いもよらぬ言葉。
ここにいる誰しもが驚き、目を見開く。俺自身もその言葉の意味が分からなくて、はぇ?と素っ頓狂な声をあげた。
生徒会側……?逆に生徒会の敵っているの?
「驚くのも無理はないだろうが、どちらにつくかは早めに決断してほしい。近頃、よくない噂が学院に広まっていてな。まったく度し難い」
「あ、あのっ!ちょっと意味がわからないんですけど……!」
「……まさか、知らんのか?」
そんな驚いた顔されても、こっちが困るんだけどなぁ。
蓮巳先輩は俺が事情を知っていると思っていたらしく、珍しく少し慌てながらも、そうかと低く呟いて遠くを見つめる。
そして、昔話をするように一つ一つゆっくりと言葉を紡いだ。
「えっと……三奇人、でしたっけ?その凄い人たちが、零先輩とかなた先輩、そんで渉さん。『fine』がそれを倒して……?」
さぁ、どうしよう。説明を聞いたら余計に分からなくなったぞ。
「まぁそう難しく考えるな。あの頃はまさに地獄だったんだ。治安も悪く、廃れていた。そんな夢ノ咲学院に新風を巻き起こしたのが、今は不在の生徒会長が率いる『fine』というわけだ」
「な、なるほど……?」
あらかた説明し終えた蓮巳先輩は、ふぅと小さく吐息を漏らした。
過去がいろいろ大変だったのはさっきの話で窺えたけど、それでも蓮巳先輩が教えてくれたのはほんの一部分に過ぎないんだろう。
「ふっふ〜ん、凄いだろ『fine』って!」
「まぁ、確かに凄いかも。なんかカッコいいし、桃李が憧れるのもわかる気がする」
「でしょでしょ〜っ!会長は本当に優しくて〜、全世界の憧れのまとだよっ!」
興奮冷めやらぬ様子で話す桃李を、弓弦先輩は微笑ましそうに見つめながら「お行儀が悪いですよ坊ちゃま」と小言を垂れた。
「それで、A。貴様の返事を聞きたい。はっきり言ってしまえば、俺は貴様が『異質』な存在だからこそ輝けるものがあると踏んでいる。力をかしてほしい」
コホンと咳払いして自分に注目を集めた蓮巳先輩は、力強い眼差しでそう言った。
俺はその迫力に気圧されながらも、意を決して高らかに宣言する。
「っ俺は__」
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苺バニラ(プロフ) - あんみつさん» コメントを返すのが遅れてしまい申し訳ありません、わざわざ教えてくださいりありがとうございます。確認次第すぐに直しますね。誤字のご指摘、助かりました! (2020年5月2日 16時) (レス) id: 04f16d165f (このIDを非表示/違反報告)
あんみつ - こんにちは。とても面白い作品で見入ってしまいました。半年前の作品に口を出して申し訳ないのですが、knightではなくknightsではありませんか?間違っていたら申し訳ございません。 (2020年4月19日 11時) (レス) id: e8e252d741 (このIDを非表示/違反報告)
苺バニラ(プロフ) - アルカリさん» いつもご愛読ありがとうございます!作者として、読者さまに面白いと言ってもらえることが一番嬉しいです!これからも、満足していただけるよう精進していきます(*´ω`*) (2019年10月7日 18時) (レス) id: 563228d52f (このIDを非表示/違反報告)
アルカリ - 長文失礼します。苺バニラさんの、小説は面白くていつも見ています。これからも更新頑張ってください!長文失礼しました。 (2019年10月7日 17時) (レス) id: f17e38f5ae (このIDを非表示/違反報告)
苺バニラ(プロフ) - 錐餌八戸さん» コメントありがとうございます!零さんとの関係は家族てきな感じにしたいなぁと思っていたので、そう言っていただけると嬉しいです〜!これからも、おじいちゃんと孫コンビで頑張ってもらいたいですねぇ(*´ω`*) (2019年9月15日 7時) (レス) id: 563228d52f (このIDを非表示/違反報告)
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