【あんスタ】男だけど何か？

人違いの神様事件簿*３ ページ41

「ちょ、何するんですか！」

これ確実に怒ってない？

次は水鉄砲とか持ってこられるかも、と身構えて目を瞑ると、彼は楽しげにクスクスと笑い声をあげた。そして次の瞬間、頭に何か柔らかいものが置かれた感触があった。

驚いて目を開け、両手でソレを掴むと、

「うん？ぬいぐるみ？」

一瞬タオルかとも思ったけれど、形がしっかりしているから恐らくぬいぐるみだ。

「にゅうどうかじかさんです。しんかいぎょさんですよ〜」

「え？新海魚？」

「はい。とってもかわいいでしょう？」

そう言われても。そもそも俺、海洋生物にはそこまで詳しくないんだよなぁ。

「一体どんな魚で──」

とりあえず、頭から下ろした全貌を確認する。両手にちょうど収まるくらいのサイズで、ふわふわのピンク色の生地が可愛さを物語ってい……る？

「ひぃッ！？あ、あの、これっ」

デフォルメされているとはいえ、その顔面は異様さを放っていた。

この人形を一言で表すなら、そうだな……きっっっもち悪ッ！！なにこれ！え、キモっ！！俗にいう『キモかわ』の類いに入るそれは、もう可愛いの『か』の字も入っていなかった。

「ぷれぜんと、ですよ。ぼくのたいせつな『かぞく』なので、かわいがってあげてくださいね……♪」

「いやいや、家族なら遠慮しますよー。俺には家族の仲を引き裂くなんて、とてもじゃないけどできません……」

あー残念だなー、とわざとらしく嘆いてみせる。

こんな悪夢で出てきそうな面構えしたぬいぐるみ、貰っても困るというのが本音だ。

「このこも、あなたのもとにいるのが『しあわせ』だとおもうんです。ほら、かおを『みて』ください。とっても、よろこんでいますよ……♪」

「次はお前だ、みたいな目で見られてる気がするのは気のせいでしょうか」

少しの抵抗も虚しく、押し付けられたぬいぐるみを渋々見つめる。

うん、何度顔を見てもキモい。目が合っただけで呪われそう。でも手触りだけは最高。見た目に反してふわふわ。気持ちいい。

戯れに、よしよし、とぬいぐるみの頭を撫でてやる。ぶす、としたぬいぐるみの顔は変わらないけれど。いや、ほんとブッスゥとしてんな。もっと笑えないのかコイツ。本気出せよぬいぐるみくん。おまえならやれる。……やっぱり笑ってもキモそうだからいいや。

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