ファッションショー*２ ページ26
自己紹介を済ませて歩いていると彼──影片先輩は、手芸部とプレートが掲げられた部屋の前で足を止め、ドアを開けた。
「お師さんおる？」
中から、影片か、という声が聞こえてくる。見れば、そこには椅子に座ってレースを編む男の人がいた。この人がお師さん？
「あんなぁ、失くしとったマド姉ェのボタン、この子が見つけてくれてん」
「どうも……」
影片先輩の後ろからひょっこり顔を出す。お師さん(？)は表情を変えずに俺に視線をやる。
「きみは新入生かい？」
「あ、はい」
あまり興味がないようで、そう、と呟くと視線を手元に戻す彼。反応それだけ！？もうちょっと何か言ってくれても……。
『こんにちは！』
ショックを受けていると、どこからともなく女の子の声がした。
「え？今、どこから」
辺りを見回す。すると、机の下に隠れるようにして、ちまっとした影を見つけた。
『ふふっ、見つかっちゃったかしら』
「わぁあああ！？しゃ、喋っ！？」
『あたしはマドモアゼル。こっちは斎宮宗くんよ』
その正体はアンティーク人形だった。お師さん改めて斎宮先輩は、マドモアゼルを机の上に置くと、またレース編みを続行する。
『あなたがボタンを見つけてくれたのね？どうもありがとう♪』
「どういたしまして……？」
マドモアゼルは楽しそうに話しかけてくるけれど、彼女の口や手足が動いているわけではない。ということは、これって……
「腹話術ですか？」
ちらりと斎宮先輩を見る。
『ちがうわ。そう思ってしまうのも仕方がないけれど』
斎宮先輩ではなくマドモアゼルが答えた。
「えぇ……」
まさかの否定。腹話術じゃなかったらホラーだよ。
『そんなことより、あなたの名前を教えて？』
「……城崎Aです」
挨拶するため、マドモアゼルに近づいた。
『あら素敵な名前！よろしくね』
「こちらこそ、」
「ん？きみ──」
不意に斎宮先輩は俺の顔を見て、目を大きく見開いた。そして慌てて立ち上がると、人差し指と親指で俺の顎を掬いあげる。
「──顔をよく見せたまえ！」
「うぎゅっ！？」
ぽきゅ、と頚椎から鳴ってはいかない音が。
「ふむ、メンテナンスは必要だね。だが元の造形は……ほう、なるほど……」
ブツブツ言いながら、俺の目や鼻、口などをじぃっと見つめる先輩。
「……悪くない。いや、それどころか」
「あ、あの、」
「こうしてはいられない！」
そう叫ぶや否や、斎宮先輩はハンガーラックから一着の衣装を取り出した。
「きっと似合うはずだ。是非着てみてくれ」
「は、はぁ」
思わず生返事。ほなお着替えしよか、と影片先輩に簡易的に作られた試着室にぶち込まれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1531人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
苺バニラ(プロフ) - りなさん» ありがとうございます！そう言って頂けると、嬉しい限りです！更新が遅めになっていて申し訳ない気持ちで一杯ですが、これからも頑張ります！ (2019年8月20日 14時) (
レス) id: 563228d52f (このIDを非表示/違反報告)
りな - 凄く良かったです!!面白かったです!!更新無理をせず頑張ってください！応援します!! (2019年8月20日 10時) (レス) id: 55c1958e88 (このIDを非表示/違反報告)
苺バニラ(プロフ) - りさこさん» ありがとうございます(*´ω｀*)とっても嬉しいですし、励みになりました！りさこさんは優しい方ですね！今後も頑張ります!! (2019年7月29日 7時) (レス) id: 563228d52f (このIDを非表示/違反報告)
りさこ(プロフ) - 更新お疲れ様です！とにかく最高でした！！これからも応援してます！！ (2019年7月29日 0時) (レス) id: c7281289de (このIDを非表示/違反報告)
苺バニラ(プロフ) - 夜桜ナイフさん» ありがとうございます！時間が空き次第でよければ、拝見させてもらいますね！ (2019年7月14日 16時) (レス) id: 563228d52f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
