【ヒロアカ】光速、遠回り【相澤消太】 (ページ9)

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魂が抜けたようにトボトボ歩き、帰宅すれば玄関に靴が一足並んでいた。
廊下の先に仄かな光が見える。

相澤君かな。
昨日に比べて仕事の終わる時間の差がすごい。
気遣ってくれたなら、申し訳ない。

そう悶々と思いつつ、靴を脱ぐ。

「おかえり、A」

靴を揃えた手を止め、そっと振り返れば予想通り相澤君が立っていた。

優しく出迎えてくれる彼の姿に何故か押さえ込んでいた感情が堰を切ったように溢れ出した。

半ばタックルするように抱きつけば、多少よろめいたものの、しっかりと受け止めてくれる。

「･･････大丈夫だ」

相澤君はただ大丈夫だ、と繰り返し言いながらしばらく頭を撫で、体を抱きしめていてくれた。

＿＿＿
＿＿＿

「落ち着いたか？」

「うん。ごめんね、急に」

「いや、いい。昨日の俺も似たようなものだからな」

相澤君が用意してくれたコーヒーを飲む。
フーフーと液面に息を吹きかける彼の様子を眺めていれば、相澤君は少々不満そうな顔をした。

「免停だって。それと、雄英で復帰訓練を行えってさ。だからしばらくお世話になると思う」

「ああ」

「それでさ、明日、TDL(トレーニングの台所ランド)取ってくれないかな。個性の具合を確かめたいの」

「わかった」

そう答えてから相澤君はやっとコーヒーの一口目を口にした。
眉間に皺寄せる様子からして、きっと軽い火傷をしたんだと思う。

「･･････Aが帰ってきたこと話したから、今日1日山田がひたすら騒がしかった」

「へぇー、ひざしが？まあなんか想像つくかも」

「明日もうるさくなるかと思うと気が滅入る」

「なんだかんだで好きなくせに」

コーヒーを飲み終わり、スッと席を立つ。
夕飯の支度しないと。

「相澤君、今日泊まる？」

「･･････いや、帰る。今のAは高校生だしな。でも夕飯は食べてってもいいか」

「どーぞ」

妙に気遣う様子がおかしくて、クスクス笑いながら夕飯の支度をする。

「･･････手伝う。カレーだろ？」

憮然とした表情で相澤君は隣に立ち、ピーラーで人参の皮を剥き始める。

「ありがと」

そこから特に目立った会話はなく、黙々とカレーを2人で作る。

その沈黙が妙に心地よくて、終始ゆるりと口角は上がったままだった。