くらい、食らい、Cry【谷山紀章】 (ページ37)

今日:5 hit、昨日:4 hit、合計:38,001 hit

▼ ページ37

「まぁ、まずお前は落ちたよな
俺と同じ役でのオーディションだもんな」

指をさされる

A「…指で人をさしてはいけないって習わなかったの？」

「そして、伊月も落ちる」

A「………はぁ？」

何かが切れたような音がした
それと同時に、審査員から集合の合図がかかった

ふつふつと湧き上がる何かを抑えるべく、
元の場所へと行き、目を閉じた
それでも消えない
…とてつもなく、むしゃくしゃする

あー、これが怒りか
そうだ、そうだよねぇ………

思わず、首を揺らしながら自然と笑みが零れる
可笑しくなりそうだ、本当に

脳内で延々と言葉がリピートする

＿＿＿＿＿＿＿＿＿"そして、伊月も落ちる"

怒りが酷い
他から見たら、"沸点低い奴"って思われるのかもしれない

…けど、由佳は僕の相棒だ
僕は由佳の努力を知っている
由佳は、一生懸命だ
僕とは違って、面倒だと思ってもしっかりやる
僕は、途中放棄するのがオチだけど、
しっかりやっている
………そんなしっかりやっている奴を馬鹿にするのは、
僕たちからしたら、"天才"の存在の殴りたい衝動((ry

クラスの中で群を抜いて、本当凄かった奴だ
それは、先生も褒めていて、
彼が自身の才能に気が付いたのは1年の中間
それからは、ずっと僕らを下で見ていたな
…まぁ、実際下だったんだけどさ

でも、ムカつくものはムカつくんだよ
何処か、懐かしいような気もする
こんな気分…

ムカついているはずなのに、
不思議と冷静で周りの声が良くはっきりと聞こえる
それは、僕の他の2人が演技をしていてもだ

珍しい、珍しすぎる…
兄者との喧嘩なんて、本当酷いくらいなのに、
本当に冷静すぎる

………あまりにも、冷静で、
2人の演技も"凄い"と評価できる
多分、自分の演技力がなさ過ぎて、
何もかも凄く見えるんだろうけど

「お前の番だぞ、赤羽」

名前を呼ぶな、キモチワルイ
無視をすれば、前髪を鷲掴みして僕に向かって言ったのだ

＿＿＿＿＿＿＿"落ちるんだから、逃げていいんだぞ"と

俺でさえ、微かに聞こえた程度だ
そしたら、審査員も周りの人も聞こえるはずがない

奴の手は、どんどん上へと上がっていき、
髪の毛が引っ張られて痛い
極微量ながらも、髪の毛の抜ける音もする

嗚呼、ムカつくな
本当に、ムカつくね

行き場のない怒りが必然と拳に集中した