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いつか彼は言っていた
守りたいもののための力だと。
グルッペン様も、ゾムさんも、どうしてそんな自分を責めるんだろう。私は私の力を、守りたいもののために使っただけ。

『あの、お願い、が、あります』
「…やめてや、帰ったらなんでも聞いたるから。今はそんなん、言わんで」
『だいせんせ、に、ごめんなさいっ、て。』

彼が教えてくれたのは、私が傷つかないための銃の使い方だ。命を奪わずに相手を止める方法や、片手で撃ってはいけないということ。
私はそれを全て破った。咄嗟に、相手を殺さないとと思ってしまって。お姉ちゃんのフリをした女の人の頭を撃った。

そのことを聞き苦しい言葉で伝えると、ゾムさんはもっと苦しそうな顔をした。

『それ、と、…もうひと、つ…』

『ゾムさんは、じぶ、んに、できることを、やった…だけ…、自分を責め、ない、で…っ!』

私が裏切った時に、ゾムさんがかけてくれた言葉
あの言葉に私はとても救われた

私を抱く腕に力がこもる
彼越しに見える空の流れが速い
揺れは小さいままなのに、ゾムさんの足はスピードを上げたようだ

「まだ、俺が、妹みたいに思っとるって言ったん、信じてる?」
『え…?』
「とっくの昔にそんなん、変わっとるで」

いつも思う、ゾムさんは切り替えが早いのだと。
ずっと辛そうだった表情は、強い覚悟を決めたようにまっすぐ前を向いていた

「なぁA、死ぬんやったら、一緒に死のな?なんなら俺が殺したるから。」
『なに、言って…』
「やから、今はまだそん時ちゃうってこと!」

ペースを落とすことなく駆け続ける翡翠の瞳は爛々と輝いている
そう、ゾムさんには、その表情がお似合いだ

そんなことを思いながら、私はゆっくり意識を手放した。





草原にいた
ひとらんさんの育てたお花達のように、楽しそうに咲き乱れる薄い紫の花
ぽつんと立っている私

ここはどこだろう
どこかわからないけど、何となく見覚えがある
思い出せないけど、少し懐かしいような、そんな場所。

「A」

優しくて甘い声が私を呼ぶ
ずっとずっと、聞きたかった大好きな声

『お姉ちゃん!』

よく似た背格好だけど、雰囲気が殺伐としていた偽物と違う
今目の前にいるお姉ちゃんは、ふんわりした空気を纏っている

「ごめんね、Aの夢を見届けてあげられなくて。でも、優しくて頼りになる皆さんと一緒で安心したわ」

だから、早く帰ってあげなさい


手を伸ばせば、お姉ちゃんは消えた
残ったのは、あの花の香りだけ

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まち(プロフ) - 初めまして、1話したのかと目から読ませていただき、完結までお疲れ様でした。とても素敵な作品に出逢えたこと、心から嬉しく思います。素敵な作品をありがとうございました。 (2020年7月30日 3時) (レス) id: 9b1209b0b8 (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - こんにちは!あまりの面白さに思わず一気読みしてしまうほどでした!!!!!!!こんなに幸せで素敵なお話を読めてとても嬉しいです!ありがとうございます! (2020年3月11日 14時) (レス) id: c0349a147b (このIDを非表示/違反報告)
カラ - とても面白かったです。久しぶりに夢中になって読みました。素敵な作品をありがとうございます! (2020年2月5日 20時) (レス) id: 4407d2bed4 (このIDを非表示/違反報告)
1 - あれ?HappyENDって、こんなに泣けるもんだったっけ? って、半泣きで最後まで読ませて頂きました。とても良い作品でした。 (2020年1月11日 17時) (レス) id: 3bc86cc6f5 (このIDを非表示/違反報告)
レック(プロフ) - すみれいんさん» 度々感想の方お聞かせ頂きありがとうございます!何度も楽しんでいただけているようで本当に嬉しいです。先の展開を知らないと気付かない伏線もたくさんはっておりますので、是非また、新しい笑顔をお見せいただけたらなぁと思います。 (2020年1月9日 9時) (レス) id: a402dc079e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:レック | 作成日時:2019年9月13日 0時

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