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『お、落ちるっ、落ちるっーー！！』
｢俺が落とすわけないやろ？ほら、もっとくっついて。抱きにくいから｣
慣れた手つきで城壁を登るゾムさん
窓枠や屋根を足場にして、走るように上に進んでいる
片手で私の腰を支え、もう片方の手と両足で登るのはなんとも芸達者なことだが、地上から遠く離れた高さで片腕だけで支えられている身としては怖くて仕方ない
両腕で彼の首にぎゅうっとしがみつきその肩に顔を埋めると、ゾムさんは嬉しそうにクックと笑った
｢ほら、A。着いたで。｣
いつの間にか止んだ振動、穏やかに吹き付ける風
ゾムさんの言葉にゆっくりと顔を上げると、目の前には真っ青な空が広がっていた
『わあぁ…！！』
自分の足で城壁の上に立つ
周りから切り離され空に吸い込まれそうなこの場所で、聞こえるのは耳を切る風とゾムさんの呼吸の音
『わぁ…、すごいですね、！』
｢…なんか、初めて来た時みたいやなぁ｣
『え？』
｢Aの部屋案内したん俺やったやろ？あん時もキッチン見て『わあぁ』しか言うてなかったで｣
『そうでしたっけ…』
そんな小さなひとコマのこと、よく覚えてるなぁ
あの頃から私は成長できたのか、夢に近付けたのか
ぼーっと空を見つめながら自分に問いかける
｢A｣
穏やかに私を呼ぶ声に振り向くと、スっと頭に手を添えられる
顔が近付き思わず目をつぶると、ゾムさんは悪戯っぽく笑った
｢キス、してほしかった？｣
『っ！』
｢欲しかったらいつでもしたるって｣
額に口付けを落とし、また彼は空を見上げた
残る熱をじんわりと感じながら同じように上を向くと、頭がさっきより少し重い
違和感を感じて髪に手をやると、いつか見た、色の変わる珍しい髪飾り
『ゾムさん、これ…』
｢すまんかった｣
『え…？』
｢俺が予定通り帰って来とってはよお姉さんのこと伝えれてたら、Aにあんな真似させへんかった｣
『それは、ゾムさんが悪いんじゃ』
｢まあな｣
『え？』
｢今さら言うてもしゃあないし、俺も全力で仕事やった結果や。そやろ？｣
『は、はい』
｢…やから、Aも自分責めんなや｣
風に揺られる前髪の隙間から覗く瞳は透き通る様に真っ直ぐで、優しくて
｢お前はお前で全力で最善策をとったんや。Aはなんも悪ないんやで｣
『ぞむ、さ…』
｢その髪飾り、よぉ似合っとる。あん時Aが欲しそうにしとったん、俺見とったで｣
頬を伝う涙は彼の手によって拭われる
髪の飾りがキラリと光った
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フェルト - 伏線回収が神！うらつくで稀に見るほんとうの鬼才のお方ですね！最高です！ (2019年9月14日 10時) (
レス) id: 00cb91440a (このIDを非表示/違反報告)
RaZu@らず(プロフ) - 伏線回収が…！ありがとうございます、わかりやすいです…これからも更新楽しみに待っております！ (2019年9月6日 19時) (レス) id: a4ef94e121 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの子(プロフ) - 前作からの伏線がどんどん回収されてくのドキドキします…これからも更新楽しみにしております。 (2019年8月31日 7時) (レス) id: 54ffec1f7f (このIDを非表示/違反報告)
RaZu@らず(プロフ) - 嫉妬する総統さまが…!!!最高です……!!!!!!ありがとうございます…!!!!!!!!!!!! (2019年8月27日 15時) (レス) id: a4ef94e121 (このIDを非表示/違反報告)
琉兎(プロフ) - 主ちゃん可愛すぎっ！惚れてまう！！続きが気になるんじゃぁ！！！更新頑張って下さい、楽しみにしてます！！ (2019年8月24日 17時) (レス) id: 3584f7d8aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：レック | 作成日時：2019年8月18日 3時
