四十九言目 ページ4
「何か言えよ」
勝ち誇ったようなその声を聞いて頭の中に呼び出す。
昔の事。私を生かした男。最年少幹部と呼ばれたアイツの声を。
もう一度大きく息を吸い込んで目の前の男を見る。
貴方「一つ、取引をしようか」
目の前の男から、後ろにいた部下達から、見ていた姐さんと中也から小さく声が漏れた。
貴方「知ってるよ。君が隠してる事。逃げた場所。けれどね、君自身に答えてもらわなきゃいけないんだ。だから取引をしよう。君が素直に言うなら殺さない。君も家族も君の上司達も」
何を…！と声を上げる姐さんを手で制して続ける。
貴方「悪くないだろう？」
聞こえる。
逃げた場所、設備、人数、その人たちの異能や得意な事、経路、他の仲間の居所。
それをメモ用紙に書きなぐる。
人は究極の選択を前にすると動揺する。
その時、様々な事を考える。思考が緩む。考えまいとしていた事さえ頭の端に過る。その隙をついた。
書き終えても尚男は目を泳がせ唇を噛んでいた。
貴方「もういいよ。好きにしな。時間切れだ」
姐さんの部下達にそう言って姐さんの元に歩く。
部屋に静けさが戻る。
そして銃声。
少し振り向いた際に見えた赤い血飛沫。
歪む目の前。
自分の足元が崩れる感覚。
叫び声が聞こえた。
中也side
中也「A……！」
俺が叫ぶのと同時にAが床に倒れ込む。
近寄って抱き起こす。でも何時もみたいな顔色の悪さは然程なく、ただ眠っているように見えた。
姐さんと部屋を出てAを医務室に運ぶべく廊下を進む。
紅葉「……何が起きたのじゃ。一体、あれは」
中也「この感じ、何時もの血を見ただけというわけではなさそうですね」
紅葉「あの雰囲気、太宰そのもの」
中也「……彼奴を思い描いていたのかもしれませんね。…でもあんなにそっくりにならなくても」
話し方、声、雰囲気、圧、佇まいから仕草まで太宰だった。
似すぎていて吐き気さえした。
あんなのAじゃねェ。
取り憑かれてるだけだ。
紅葉「私は反対じゃ。Aを拷問担当に加えるなど」
中也「俺もです」
紅葉「あんな事をさせてはAが駄目になっていくだけ。鴎外殿はAを駒のように使っておる。それだけは許せぬ」
上手くやりはしたようだが、あんなの見てられねェ。
太宰に蝕まれていくAなんて絶対に見たくない。
あんな風になってしまうならやらせない方がいい。
これが続いてAが彼奴そっくりになるなら俺の手で殺した方がマシだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 785人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鶴媛(プロフ) - 紅野さん» わぁ！ありがとうございます！！お忙しいのに私の勘違いですみません！更新嬉しかったです、暑い日が続きますがどうかお体に気をつけてお過ごし下さい。 (2020年8月18日 1時) (
レス) id: dda77e3f70 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 鶴媛さん» コメントありがとうございます。いえいえ！忙しくて更新が止まってしまっただけです！また空いてる時間で更新するのでご安心を…！ (2020年8月18日 0時) (レス) id: b4d088780f (このIDを非表示/違反報告)
鶴媛(プロフ) - え、八十五話で終わりなんですか？かなり気になるところで終わってしまって少し残念に思います (2020年8月17日 4時) (レス) id: 5d76437753 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 橘明音さん» ありがとうございます。そう思ってもらえて良かったです。ゆっくりですが頑張りますね。 (2020年3月2日 11時) (レス) id: b4d088780f (このIDを非表示/違反報告)
橘明音(プロフ) - 最後のコメントありがとうございます。 私は受験終わったけど学校なくて本当に暇だったのでそう言って書いてくださること、本当に嬉しいです！更新楽しみにしてます。頑張ってください！ (2020年3月1日 23時) (レス) id: 0fca2029db (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紅野 | 作成日時：2019年2月6日 15時
