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言わないで×6 ページ6

その日の夜のこと。
しんと静まり返った部屋のドアが開いた。
真っ暗な部屋の隅を見ていたら光が差したからそう思っただけ。

「やっぱりAか」

その声は聞き覚えがあった。
昔何度も聞いた。

貴方「何で来たの。会いたくないのに。どうせついこの前まで忘れてたんでしょ。…中也も」

中也「誰が何を忘れてたって?」

貴方「二人が私のこと」

睨むように暗く表情がわからない中也を見る。
するとパチっと部屋の電気がつけられ、 中也の顔がはっきりと見えるようになった。

中也「馬鹿だな。忘れてなんかねぇよ」

貴方「だって!お兄ちゃんは私の事なんか忘れてるみたいだった!私の知ってるお兄ちゃんなんて、もういなかったんだもん…!」

中也「それは太宰の話だろ。俺は忘れてねぇよ」

貴方「え……」

中也だけは私が私だって事わかってくれてた。
でもお兄ちゃんはそうじゃない。
私の大好きなお兄ちゃんはもうお兄ちゃんじゃない。
嬉しいのか悲しいのかわからない涙を落とす。
中也はただ黙って私の手を握っていた。

幾らか経った頃、中也は小さく言葉を発した。

中也「……なぁ、お前人殺したって本当か」

貴方「本当。……だって生きてる理由が無くなっちゃったの」

中也「生きてる理由?」

貴方「お兄ちゃんのこと大好きだったのに大嫌いになっちゃったから」

大好きだった。否、そんなものじゃないのかもしれない。きっと彼の事を本気で愛してさえいた。なのに……。

貴方「ねぇ、中也のことお兄ちゃんだと思い込めば苦しくなくなるかな…。今までの記憶を全部中也に塗り替えれば生きていられるかな…」

中也「さぁな。お前のしたいようにすりゃいいだろ」

彼は駄目、嫌だって言わなかった。
だから私はそれからずっと『お兄ちゃん』を塗り替えて生きている。



今思えばそれで良かった。
昔のまま太宰のことをお兄ちゃんと呼んでいたらきっと付き合えなかったと思うし、付き合えても別れていたような気さえする。
だって私の中で太宰は『最愛のお兄ちゃん』であって、『恋愛対象のお兄ちゃん』ではなかったから。

愛していたのに付き合うのは何だか違うだなんて変なの。
自分でもそう思うくらい変な話だけど、今思うときっとそういうことなんだ。
だからこれで良かった。

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設定キーワード:文スト , 太宰治 , 紅野   
作品ジャンル:恋愛
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紅野(プロフ) - モクズノドウケシさん» ありがとうございます…!掛け持ちしてるせいで更新かなり遅くなってしまいましたがここからまた頑張ります! (2019年1月5日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
モクズノドウケシ(プロフ) - 織田さんの出した最後の正しい道……。感極まります……、続きだ。嬉しい。更新頑張って下さいね! (2019年1月5日 13時) (レス) id: fd101bcda6 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - ジブリールさん» ありがとうございます!ゆっくり更新ですが頑張ります…! (2017年12月27日 13時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
ジブリール - 続きが凄い気になります!更新待ってますね! (2017年12月24日 22時) (レス) id: 41cfeef620 (このIDを非表示/違反報告)
味の素(プロフ) - 続きおめでとうございます!!更新がんばってください! (2017年10月9日 10時) (レス) id: d5befd4dfc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅野 | 作成日時:2017年10月8日 22時

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