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言わないで×1 ページ1

これは私と太宰と中也の話。

ずっとずっと前。
もう記憶の端に追いやられて思い出すのも難しい話。

黙って聞いてね。

この話に幸せはない。

あるのは孤独と恐怖と憎しみだけ。

すれ違いが生んだ光の無い話。



私達三人はだいたい同じ頃にマフィアに引き取られた。
詳しいことはわからない。
聞いたことない。

私はこの時の事を覚えてないのだ。
だから良いのか悪いのかわからないけど、親の事を何も知らない。
太宰と中也は薄っすらと覚えているようだけど私は全くわからない。

順番に話してこうか。

____________________________________________

一番古い記憶は五歳か六歳の頃。
まだ太宰の事を嫌ってなくて、純粋な子供だった時。

貴方「……治お兄ちゃん、何よんでるの?」

太宰「Aには難しいよ」

貴方「どんなお話?」

太宰「んー…。どうやったら勝てるかって話。かな」

貴方「…わかんない」

いつも彼は難しい本を読んでいた。
昔から頭良かったから。

私は太宰と一緒に森さんの所に引き取られていた。
だから自然と二人でいることが多かった。
部屋も一緒だったし。
今思うと森さんは太宰の頭の良さを買ったんだと思う。
私はただ幼女だったから引き取ったんだろう。
この時点でもう差別だよなぁ…。

部屋は子供二人で使うには大きくて、箪笥や本棚、机が置いてあってもがらんとしていた。

昔の彼は優しかった。
本当に血の繋がった兄の様だった。
彼の事が大好きだった。

でもそれから数年して太宰も中也も私と一緒にいてくれなくなった。
ううん。そうだと誤解が生まれるね。
一緒にいれなくなった。
任務に連れて行かれるようになったから。

二人で使っていた広い部屋は私一人で使うようになった。
立場が違ったから会いたくても会えなかった。
マフィアの人と組織内の医者が育ててる娘じゃ立場が違う。
寂しかった。
話し相手が欲しかった。

森「最近難しい顔ばかりしているね。何か悩んでいるのかい?」

貴方「……いいえ」

森「遠慮しなくていいんだよ?」

貴方「……何もないです」

あの人にどうにか出来る問題じゃない。
というか、言ったところでどうにもしてくれないだろう。
だって私を此処に置いておきたいんだもん。
この広い部屋に閉じ込めておきたいんだもん。

嗚呼、話し相手が欲しい……。




「僕がなってあげるよ」

言わないで×2→



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設定タグ:文スト , 太宰治 , 紅野   
作品ジャンル:恋愛
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アミ - この作品、すごく面白かったです!!更新頑張ってください! (2020年4月8日 11時) (レス) id: 808cf034c3 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - モクズノドウケシさん» ありがとうございます…!掛け持ちしてるせいで更新かなり遅くなってしまいましたがここからまた頑張ります! (2019年1月5日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
モクズノドウケシ(プロフ) - 織田さんの出した最後の正しい道……。感極まります……、続きだ。嬉しい。更新頑張って下さいね! (2019年1月5日 13時) (レス) id: fd101bcda6 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - ジブリールさん» ありがとうございます!ゆっくり更新ですが頑張ります…! (2017年12月27日 13時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
ジブリール - 続きが凄い気になります!更新待ってますね! (2017年12月24日 22時) (レス) id: 41cfeef620 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅野 | 作成日時:2017年10月8日 22時

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