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三十一言目 ページ35

次の日。
結局殆ど寝る事はできないまま私は首領に条件付きの許可を得て仕事をしていた。
条件。それは中也が数時間起きに見に来るというもの。
安全確認のようなものだ。

朝も今まで通りあまり話す事もなく家を出て来た。
昨日の夜だってあれ以上しっかりとした会話はなく、気がついたら朝になっていた。
やっぱり苦しいや。

ため息を落として目の前の画面に文字を打ち込んでいると後ろから扉の開く音がした。
誰かと思えば中也で、今までと何も変わらないのにどう反応したらいいのかわからなくなった。
また画面に向こうとした時、なァと呼び止められた。

貴方「何」

中也「……正直にイエスかノーで答えろ。昨日言ってた振り向いてくれる筈のない人ってのは俺だろ」

貴方「え……」

中也「其奴の事ずっと好きだって言ってただろ?気づいたンだよ。自分の初めてを好きでもないヤツに頼み込む女がいる訳ねェって」

貴方「もしそうだって言ったらどうするの」

中也「正直に言えよ」

貴方「……そうだよ。中也の事だよ。でもいいんだ。中也は瑞希さんの方が好きだもんね」

返ってくるのはきっと無言か肯定だ。
そう思っていたのに聞こえてきたのはよく部下や仲間と話している時なんかに聞く彼独特の軽快な笑い声だった。

中也「勘違いしてンじゃねェよ、馬ァ鹿。俺が好きなのは手前で間に合ってンだよ」

貴方「え……?いや、冗談言わないでよ。中也タイプでしょ?瑞希さんの方が」

中也「まァな。でも別にそういう理由で秘書にしてる訳じゃねェし、タイプとかどうでもいい。あの日から手前の事しか見れなくなってンだよ」

貴方「……でも本当だったとしても今まで一回もそんな事言ってくれなかった」

中也「……いや、実は手前は覚えてねェだろうが、太宰居なくなった後、荒れた勢いで突然俺に好きだって言うから俺もだって言った事はある」

貴方「え、そんな事…。覚えてない…」

中也「結構酔ってたからな。俺もお前も」

貴方「それは、まぁ、良いとしても、何で今までちゃんとこうやって話してくれなかったの。黙ってたり、一言二言しか言わなかったり」

中也「あァ、それはな……」

今までの勢いは無かったかのように歯切れの悪い返事をする彼。
そんなに言いたくない事?

中也「……帰ったら全部言うから。今までの事も、手前の異能の事も。ちゃんと言うから」

貴方「わかった。約束ね」

目の前で微笑み頷く彼は私の知ってる彼じゃなくて、求め続けていた中原中也だった。

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設定タグ:文スト , 中原中也 , 紅野   
作品ジャンル:恋愛
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紅野(プロフ) - お白湯さん» コメントありがとうございます。やっぱり同じになる人多いですよね。いつも名字つけようか迷ってつけるのですが読む人にとったらどうなんでしょうか……。 (2019年1月13日 22時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
お白湯 - 夢主ちゃんの名字が、私の本名の名字と読み方違うだけでびっくりしました(笑) (2019年1月13日 1時) (レス) id: fa6e0c5cd0 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 聖宮さん» ありがとうございます!頑張って書こうと思います! (2018年10月1日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
聖宮(プロフ) - 寧ろ書いて欲しいです、続編楽しみに待ってます! (2018年10月1日 20時) (レス) id: 956436ae5b (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 月詞さん» ありがとうございます!いつもゆっくり更新ですが頑張りますね! (2018年9月28日 19時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅野 | 作成日時:2018年4月15日 0時

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