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二十七言目 ページ31

中也side

中也「俺とAの何がわかるンだよ」

太宰「君がAに冷たくしてる事は知ってる」

冷たく……。

太宰「Aは本気なのだよ。君がもし遊んでるだけなら……」

中也「あー、そうじゃねェんだよ……。遊んでなんかいねェし、冷たくしようとも思ってねェ。誤解だ」

太宰「何、誤解って」

中也「いや、えっと……」

言ったらきっと此奴は笑うに決まってる。
そう考えると絶対言いたくねェ。

太宰「言わないとAに嘘教えるよ。本当は中也に遊ばれてるんだよーってね」

中也「それだけはやめろ」

太宰「じゃあ言いなよ」

これはもう逃げれないな。
最悪だ。

中也「……A前にしたら何も話せなくなンだよ。本当はそんな態度取る心算全くねェのに」

珍しく予想外だったのか何度か瞬きを繰り返して黙り込んだ。

太宰「……何それ、好き過ぎてって事でいいの」

中也「あぁそうだよ!悪いかよ!」

しんと静まり返った夜の川沿いに太宰の笑い声だけが響いた。
笑い事じゃねェよ!

太宰「中也がAの事好き過ぎてだなんて面白すぎるね」

中也「五月蝿ェ!此方は冗談抜きで悩んでるっての!」

太宰「でも、安心したよ。君がそう思ってるってわかっただけでね」

Aをひょいっと抱き抱え、そのまま俺に渡すと太宰はじゃあ、とだけ言って去っていった。
何か言い返してやろうかと思ったが、濡れたせいで冷たくなったAに触れて事の重大さに気づいた。
早く連れて帰らねェと風邪ひくどころじゃ済まなくなるかもしれない。

急いで連れ帰り、どうしていいかわからずとりあえずタオルで軽く拭き、毛布で包んだ。
時々Aの先生、と呼ぶ声が聞こえる。
そこで呼ばれるのが俺だったらどんなに良いだろう。
……こんな時まで何考えてんだ。
今はAの体調を心配してやらねェと。
早く目を覚ましてくれ。

ちゃんと話したい。
いや、聞いてやりたい。
どうしてまた死のうなんて思ったのか。
言ってくれなくてもいい。ただもし俺に話す事でAが死なない方向に進めるならいい。

他人の事を自分の事のように焦るのはいつぶりだろう。
いや、今まで他の奴を前にしてそんな風に思ったことがあっただろうか。
Aの濡れた髪をタオルで拭きながらボーッと考える。
だが思い当たる事はなく、此奴だけなんだなと再確認した。

俺はやっぱりAだけが好きだ。

二十八言目→←びっくりしてます(番外編あり)



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設定タグ:文スト , 中原中也 , 紅野   
作品ジャンル:恋愛
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紅野(プロフ) - お白湯さん» コメントありがとうございます。やっぱり同じになる人多いですよね。いつも名字つけようか迷ってつけるのですが読む人にとったらどうなんでしょうか……。 (2019年1月13日 22時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
お白湯 - 夢主ちゃんの名字が、私の本名の名字と読み方違うだけでびっくりしました(笑) (2019年1月13日 1時) (レス) id: fa6e0c5cd0 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 聖宮さん» ありがとうございます!頑張って書こうと思います! (2018年10月1日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
聖宮(プロフ) - 寧ろ書いて欲しいです、続編楽しみに待ってます! (2018年10月1日 20時) (レス) id: 956436ae5b (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 月詞さん» ありがとうございます!いつもゆっくり更新ですが頑張りますね! (2018年9月28日 19時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅野 | 作成日時:2018年4月15日 0時

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