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『お酒、買ってくれてありがと』
｢Aそれ呑むとすぐ寝るんやから先にお風呂入りや｣
『なんかホントにお母さんみたい』
｢こんなヒョロいお母さん嫌やろ｣
いつもはダラダラしてしまう夜も、健一朗がいるだけで丁寧な暮らしになっている気がする。私から健一朗をとりあげられたら、私はもう廃れてしまうのではないだろうか。
彼と何も考えずに喋る時間を少しでも長くしたくて、いつもの倍以上のスピードでお風呂を済ます。
『上がった！』
｢早いなぁ｣
『健一朗もどうぞ』
｢ありがと、入ってくるわ｣
当たり前のように私の部屋のタンスから彼のスウェットを取り出す彼。タオルの位置なんかも把握するくらい私の家に何回も来てくれているんだなと感じて、幸福感に浸る。
彼はあまりデートとかするタイプではなくて。映画だったりカフェだったり、そういうところに二人で行ったのなんて付き合う前の記憶だけど。家で、二人だけの時間を過ごすだけでこんなにも幸せになれてしまうのだったら私には映画もカフェも要らない。
｢上がりました〜｣
『こっちに来てくださ〜い』
来いと言っているのに中々来ない彼は、いつも通り荷物整理だったりスマホの充電だったりをして寝る準備に取り掛かっている。全然こっちに来てくれないから私から迎えに行って、後ろからまとわりつくように抱き締める。
｢Aさん｣
『なんですか』
｢邪魔です｣
『そんなことないです』
｢いや邪魔やて｣
私の顔を見ることもなくすんなりと腕を解かれる。ツンツンしているけれど怒っている訳ではなくて、これが彼の普通なのだ。付き合いたてのときはもっと気を遣われていた様な気がして、彼は彼なりに心を開いてくれているんだなと実感する。
『もう寝るの？』
｢Aに合わせる｣
『私も健一朗に合わせる』
｢なんやそれ｣
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作者名：L | 作成日時：2022年5月4日 0時
