リナリアに苦悶する 6 (ページ10)

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259.わがままだもんページ10

＜セフン＞

それは、いつものようにAちゃんがバイトから帰ってきて、

若干未だ俺に対して気まずそうにしながら夕方を過ごして、

一緒に晩ごはんを食べながら、無言はしんどかったのか『今日ミンソギオッパの旧友の方がお店にいらして…』みたいな話を俺の様子を見ながらAちゃんが一方的にして、

その後もAちゃんは、あまり触れようとしない俺の様子を伺いつつお風呂に入り、ベッドに入って、良い子に寝静まった夜のことだった。

俺は、ベッキョニヒョンに電話をして。

『試してみればいいじゃないか。ベッキョンにAちゃんを託してみて。仮の恋人みたいにして』

『…う…仮の、恋人…』

『そうでもしないと、ずっと同じことを繰り返すことになるぞ』

昼間、ジュンミョニヒョンに相談して自分なりに出した結論について、Aのスマホを使ってベッキョニヒョンに告げたのだ。

…まぁ、おかしな話なことは重々承知だ。

俺に、そんな『Aと仮の恋人になれる権利』をベッキョニヒョンに与える権利、なんて無いんだから。

俺が、勝手に決めたこと。

「もちろん、Aの意思次第だよ。Aがベッキョニヒョンと仮の恋人になりたくないなら、もちろんその意思を優先する。権利って言い方したから悪かったよ。これは単なる提案」

『提案…』

ベッキョニヒョンは何か考えるようだった。

『…いや、仮、の意味、何？』

少しの沈黙の後、そう言うベッキョニヒョン。

『そもそも恋人なんて、お互いに恋人になりましょう、っていう認識の基で成り立ってるわけで…いつでも簡単に別れることができるものだけど？一応…』

…そうなんですけども。

だって…だって…

「…Aの初恋人になれるチャンス、俺にも欲しいもん…」

『…オイ。もん、とか言っても可愛くないぞ』

「うそだ」

『はぁ…ったく…』

ベッキョニヒョンとAが上手くいかなかったら、恋人だったことを無かったことにしてほしいもん。

全部俺のわがままだもん。

結局、俺のこの感情が恋なのかどうかに、全てが懸かっている。

でも、たとえ恋だったとしても…恋人としてのベッキョニヒョンがAを幸せにできるのなら、俺は、諦められるのかもしれない…かも、しれない。

もちろん、嫌だ！！Aが他の男のものになるなんて！！！！！

…でも、やってみなきゃ分からない。

『…じゃあ俺、攻めるからな』

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