リナリアに苦悶する 6 (ページ38)

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287.希望と絶望ページ38

＜セフン＞

そうか…ベッキョニヒョン…

『だから、そのまま。仮の恋人になっていいよ、Aと。ベッキョニヒョン』

俺がそう言ってあげたのに、まだ実行に移してなかったんだ。

…ってかなんだよ、仮の恋人って。ジュンミョニヒョン考案だからな。

キムジョンインに関しては、少し嘘をついてAに伝えた。

Aにはお仕事が忙しくなった、と言ったけど、実際にはAとベッキョニヒョンが恋人(仮)になったと勘違いした俺が、失恋の感情を知るためにそれをキムジョンインに告げたから…俺が、キムジョンインを失恋させたんだけど。

そんなこと言ったらAに嫌われそうなので、やめておいた。

失恋の痛み…わからなかったな。

Aとベッキョニヒョンが恋人(仮)になったと勘違いした時は…なんだか、胸の辺りがもやもやした感じはしたけれど。

実際に失恋した人の前になると、それほどの痛みなのだろうか、という疑念が出てきてしまった。

…やっぱり、俺は、アセクシャル。

恋愛ができない人間。

そう思うことで、楽になったじゃないか。

無理に恋愛しなくていいんだ、だってできないんだから、って…。

それなのに、変な希望が、俺を悩ませてきた…

「ベッキョニヒョンと、付き合いたいとかはないの？」

「へ…」

希望を持つから、絶望するんだ。

絶望したくなければ、はなから希望を持たないこと。

「…あんまり…考えたこと…無くて…」

「ふぅん…どうして？」

「ど、どうしてって…」

俺のことが、好きだからだろ。

でも、おそらく、告白した時に関係性が崩れるのが怖くて、ずっと俺にその気持ちをひた隠しにしている…まぁ、バレバレだけど。

そんなところが可愛いんだけど。

俺も、今の関係性が崩れるのは、怖いよ。

でも、絶望の方が…もっと、怖い。

「…考えて、みたら？」

「え…」

『お前は、Aちゃんに、俺と付き合え、なんて、絶対に言うな』

ベッキョニヒョンにはそう釘を刺されたけど。

いっそ…Aをこのまま連れ去ってくれ、と、なんど思ったことか。

変に、俺は恋愛できるかもしれない、と希望を持って、その度に傷ついて。

君に会ってから…その繰り返しだよ。

「…いいんですか…？」

「何が？」

「私と…ベッキョニオッパが付き合ったら…抱き枕、無くなっちゃいますよ…？」

…果たして、無くなるのは、抱き枕だけか。

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