275.敵対する気無し ページ26
<セフン>
「え、話、ですか…?」
俺は、まずはキムジョンインに、話をしたい、とだけ伝えた。
「うん。長くなるから、仕事が終わったらどこかで待ち合わせしたい」
「どこかで…じゃあ、セフンさんの事務所は?」
「あー…いや、別の場所がいい。んーっと…ここに来て欲しい」
俺は、ミンソギヒョンのお店の場所をスマホのアプリで示した。
「えぇっと…分かりました、メモします…」
キムジョンインは、自分の手帳に住所を書いた。
「…もしかして、Aさんのことだったり…します…?」
少し不安そうに言ってくるキムジョンイン。
「…うん、まぁね」
俺はスマホをしまいながら言う。
「…分かりました」
キムジョンインもそう言ってメモ帳をしまった。
用事は終わった。
…でも、せっかくだし、ちょっと店内見ていこうかな。
「案内してよ、店の中。せっかく来たんだし」
「えっ、あ、はい、承知致しました」
スイッチが入ったようにシャキッとするキムジョンイン。
彼に、色々と商品紹介をしてもらった。
せっかくだから何か買うか…Aに隠れてこっそりミンソギヒョンのお店で働いたお金で。
もちろん…Aに。
「女性へのプレゼントで、おすすめは?」
「女性へのプレゼント…」
「ん?」
「あ、いえ」
ずっと完璧に接客してくれていたキムジョンインが、一瞬素に戻った感じがした。
「アクセサリーですと、指輪やピアス、ネックレスが多いですかね」
「ふぅん」
「…お返し、ですか…?」
「うん、まぁ」
「…Aさんに、ですよね」
彼は、さっきから、俺の胸元をチラチラと見ている。
Aがこの店で買って、俺にくれたネックレスを。
どうだ、羨ましいだろ。
「うん。誕生日プレゼントでもらったから」
「はい、Aさんに聞いてます」
「え?」
「上司の方に、誕生日プレゼントをするのだと。恋人ではなく、上司の方に」
にっこりと笑いながら、”上司”を強調するキムジョンイン。お、やるのか?
「そうですかー。いや、ほんと、真剣に選んでくれたみたいでー。ただの上司に5万円もするネックレスくれたんですよー、ただの上司にー」
「左様でございますか。お値段以上のお気持ちがこもっておられるんでしょうね、Aさんのことですから」
Aのことを分かったように…!
…って、危ない危ない。俺、敵対する気無いんだって。
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nana(プロフ) - 凄く面白くて大好きな作品です!!更新待ってます!! (2021年9月3日 18時) (レス) id: b477b2d4fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:LUKE | 作成日時:2021年8月28日 7時