Libra ページ2
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2度目はすぐに訪れた。
右手首を見るたびに、宇髄さんの薄笑いが脳を掠めて、心が震えたから。
1週間と待てなかった私は、また彼の元へと足を運んだ。
今度は
長い髪を掬い上げなければ見えない場所。
そこに、天秤のタトゥーを入れることにした。
「ぼかし、やってみる?」
『その方が映えるかな?』
「少し派手になる。
でもAちゃん、痛がるだろうけど。」
どうする?と私を見た宇髄さんは、まるで私を試しているかのように見えた。
“ 痛みに顔歪めてる時は、ドキッとしたよ。”
前回の宇髄さんの言葉が何度も私の頭の中で再生される。
色っぽい眼差し、低く艶のある声。
再びここへ来た時点で、私の心は既に、彼に大きく傾いていた。
『そうしたら、宇髄さん、私にどきどきするでしょ?』
「はは、本当可愛い。
別に今だってしてるよ。」
『そうなの…?』
宇髄さんの言葉に、ドクリと心臓が跳ねた。
可愛いなんて、今まで言われてきたことは何度もあるけど、こんなにも間に受けるのは初めてだった。
「トレースしてから、決めようか。」
出来上がった下絵を私に向けた宇髄さんに頷いて見せると、彼は柔らかく笑って、煙草の火を消した。
立ち上がって、私の背後に立つ。
髪の毛を寄せられた時、ゾクゾクして、思わず息を呑んだ。
「綺麗だな、ここ。」
これから天秤の模様を彫る場所に指を滑らせた宇髄さんがあの顔をしているのを想像して、私は唇を結んだ。
指の感触とは違う、柔らかくて温かい感触に私は肩をぴくりと動かした。
微かに、宇髄さんの吐息がその場所の熱を冷ました。
「Aちゃん、ここ、感じるんだ?」
『…っ分かんない。』
「あはは、分かりやすいなぁ。
じゃ、こっからは大人しくしててな。」
ちゅ、とわざと小さく音をたてて、もう一度熱を落とした宇髄さんは、何事もなかったかのように無言で、下絵を私の頸に写した。
全神経が集中して、宇髄さんの手を感じていた。
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羽糸(プロフ) - みほんぬさん» みほんぬさん、コメントありがとうございます!いつも読んで頂けて光栄です🥺私も天秤の伏線考えた時は1人で鳥肌立ってました(小声)そんな風に言ってもらえて本当に嬉しいです!モチベーション上がりました!!これからも頑張ります!! (2021年12月9日 7時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - ひよさん» ひよちゃん、ありがとう!!(∞回目)本編のヒントが少なすぎました…(反省)彫り師天元…設定も内容も万人受けではないことを覚悟していたのだけど、そんな風に言ってもらえて本当に嬉しい…😭😭新作はまだ予定の段階ですが、、頑張ります!!! (2021年12月9日 7時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - ろろろーさん» はじめまして!!コメント頂きありがとうございます!!天秤のくだりでピンとくるなんて、すごいですね😳😳私は既に短編の方も読んで頂けていたことに感激しております…!!嬉しいお言葉本当にありがとうございます!! (2021年12月9日 7時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - あさひゆうひさん» あさひちゃん!すぐ読みに来てくれて本当にありがとう🥺もう1回読んでくれたところに愛を感じる…!!そうだね、杏寿郎まっすぐだからね〜。伏線、本編ではほぼ触れてないし、ヒント無さすぎた(笑)あさひちゃんとならいくらでも乾杯するよ🍻 (2021年12月9日 7時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
みほんぬ(プロフ) - 毎度読ませていただいております。完結お疲れ様でした!天秤のお話が繋がった瞬間鳥肌ぶふぁーでした!羽糸様、これからも楽しみに待っておりますので、羽糸様のペースで頑張って下さい!素晴らしい作品読ませていただきありがとうございます! (2021年12月8日 12時) (レス) @page22 id: fcebcd2438 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羽糸 | 作成日時:2021年12月3日 20時