恋、始めまして『染谷勇次郎』

じゅーごん ページ16

貴「.........愛蔵.....」





愛「......じゃあな、気を付けて帰れよ。また来週！」









逃げるように走り去っていく愛蔵



あのシリアス展開を元気で収納した........まじかよ。切り替えの早い人だこと









貴「.......かえっか」









ーーーーーーーーーー






愛「........」








やってしまった




自分の馬鹿さに呆れて、重くなっていく後悔をため息で吐きだす








あんなこと、言うつもりじゃなかった









愛「はは、今度こそ嫌われたか」







まだ自分の中に残った重い気分を笑いでふっとばとそうとでも思ったのだろうか





乾いた笑みが喉から出てくる






愛「.......はぁ...」









いっそ、嫌われた方がいいのだろうか




いつまでも彼氏持ちである女の子をずるずる引きずって








でも、相手がなぁ......相方となると余計忘れたくても忘れられない









近くにいるから






それくらい、好きだから









愛「.........」









ぽつん、と頬に滴が落ちてきた





空を見上げると黒と灰色を曖昧に混ぜたような、そんな暗い空が広がっていた







次々と雨粒が体に降りかかってくるけど









愛「(いっか、今日くらい......)」









もうすっかり水を含んでしまったスニーカーや服がやけに重く感じて









走るのも面倒になった









愛「..........好きだよ」









曇天の空を見ながら、初めて、初めて会えた可愛いと思えた女の子が






あのとき階段から落ちてきたように
俺に恋に落ちてくれればいいのに









......なんて考えていた

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