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────────先輩が私のために、なんて。
友達から聞かされた。
先輩のことが学校中で噂になっていたから。
学年一の美人でモテモテな女の人に告白されて、周囲はお似合いだなんて言っていて。
私が彼女でいること自体信じられないレベルだし、その女の人の友達は金子先輩はそいつと付き合うもんだと思っていたらしい。でも、違った。
先輩は何故か、私を選んでくれた。
先輩はキスしていたんじゃなくて、頬を叩いてしまったらしい。
「あんな女じゃなくて私の方がいいじゃない」
その女の人の言葉に苛立って。先輩らしくない。全く先輩らしくなかった。
先輩がたった1人の女の……それも、私のために人を殴るなんて。
案の定その女の人は泣いて。
───────ほんとに好きなわけないじゃない、あんたなんて私を飾るものでしかないのにそんなことするのね。そう金子先輩に言い捨てて逃げてしまったらしい。んで、その女の人にいいように噂を流されて瞬く間に学校中に広まった。
先輩は何も悪くないじゃない。
ただ私が、何をした訳でもないのに先輩と付き合ってるだけで今まで信頼してると思ってた人たちや周りからなにか言われるのが、冷たい目で見られるのが、怖かっただけ。
何があっても金子先輩を好きでいられる覚悟が、無かっただけ。
自分が傷つくのが、嫌だっただけ。
結局は私の自分勝手な思いだったのに。
自分を悪くしたくなくて、先輩が全て悪いことにしてしまった。
都合のいいように記憶を塗り替えてしまった。
────────だから、もう一度先輩に会いたかった。
「ごめんなさい」
「お前が謝ることやない」
「ごめんなさい……」
いつもそうやって許してくれる先輩に。
「先輩は、悪くないのに」
嫌いだ、しか言うことのできない私が惨めで。
「私が先輩を好きでいられなかっただけ、自分に傷がつくのが嫌だっただけです」
こころから。
「先輩、もう一度、好きになってもいいですか」
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ちゃみ - お話惹き込まれて一気読みしてしまいました…!ドストライクで凄く好きです。素敵なお話をありがとうございます。いつかまた更新されることを願っています! (2021年5月6日 0時) (レス) id: d0e9746bc6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:縁 x他1人 | 作成日時:2019年7月24日 22時