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失敗した。

完全に失敗した。



8月、熱帯夜の所沢。ちょうど私は女の子の日というやつで、
頭とお腹の痛みが寝られないほどに引かなくて、起きてしまって、
仕方なく夜の10時ほどだろうか、薬局に出向いた。



……熱帯夜というものを舐めていたんだと思う。
30度を超える気温、湿気の多いアスファルトの通り。


薬局でお目当ての薬を買ったところまでは良かったものの、
店から出た途端急に具合が悪くなる。



───────頭が痛い、お腹が痛い、耳鳴りがする、目眩がする。

揺らめくネオン街の中で、音と光が遠くなっていく───────。









「大丈夫っすか」







大丈夫じゃないっす、見ればわかるでしょ。

誰?





「家まで送りましょか」




関西弁?ここらではよく聞くものではないし、
ナンパだとしたら下手くそ過ぎやしないか。
明らかに具合の悪そうに道端にしゃがんでいる女性に「大丈夫っすか」なんて、どうにかしている。

ただ、どうしても頼りたい何かがあって、
馬鹿な話だと思うけど、────聞いたことある声のような気がして。



「よいしょ」


背負われるままに背負われて、


「家どこ?」


「すぐそこの、茶色いマンション、です」


「鍵ある?」


「あり、ます」



本当に馬鹿な話だ。
初対面の誰かも分からない男の人に背負われて、
街中を歩いている。光がゆらゆらして、吐きそうだ。



「これ、鍵?」




頷いて、男の人が鍵を開ける。顔が見えた。

知ってる人だ。見たことがある。


生憎思い出す前に意識は飛んでしまったけど、
この人になら任せられる、と思った。

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ちゃみ - お話惹き込まれて一気読みしてしまいました…!ドストライクで凄く好きです。素敵なお話をありがとうございます。いつかまた更新されることを願っています! (2021年5月6日 0時) (レス) id: d0e9746bc6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: x他1人 | 作成日時:2019年7月24日 22時

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