【刀剣乱舞】愛せないから愛させない。* 肆色*

46色目 ｢本当に頼むから大事なことは事前に脳が思い出せるようにしてほしい｣。 ページ13

一瞬の判断が命取りとなるとはまさにこのことだ。ほんの少しの時間でも油断したのがいけなかった。

おそらく鬼側は、私がここにいることに当然気づいているんだろう。なんで気づかれたんだ？気配みたいなものでも辿ったのか？私のように"色"が見えてるわけでもないのに？いやでも分からないぞ。あの時薬研と鶴丸には通じなかっただけでやっぱり普通にみんな"色"が分かるってのは……ああでもそういや獅子王もさっき分かってなさそうだったよな、じゃァなんで????

目を見開き、"色"を視界に集める。逃げ道は……あそこだ！

｢じ、じゃァ鳴狐、休ませてもらって助かった、ありがとな！｣
｢あっ……｣

言い終わらないうちに、ダッシュでその場を離れる。振り向くと同時に襖の開く音がして、そこには今剣がいた。ギリッギリじゃねェかよ！

｢あーあ、あとちょっとだったのに｣

なんてほっぺを膨らませながら、猛スピードで私の元へ走ってくる。逃げ道を探せ、"色"を探せ、探せ、探せ!!!!

走りながら、まっすぐ続く逃げ道の"色"に動揺した。だがもうやるしかない、これが正解なんだろ!?

距離が縮まる。今剣はもうそこにいる。まずい、間に合ってくれ……!!!

｢……つかまえ、｣
｢られてたまるかっ!!!!｣

"色"は外を示している。開いている障子窓、足場のない高さ。ここを一気に、飛び降りた。

｢へぇっ……!?!?｣

目を丸くする今剣が見える、遠くなる。私は落ちていく、地面に。これは…………これには見覚えがある。確か、確か、確か……！

｢……夢、だ｣

明滅と暗転を繰り返す夢、子供達が庭園で鬼ごっこをする夢、私が落ちて浮遊する夢、あの夢で私は最後、どうなった？

空中で体勢を整えながら、地面に降り立つまでの数秒で思考する。でももうほとんど覚えていなかった、あの夢は……なんだったっけ。

ああ、厄介なものだ。起きた直後は覚えてないくせに、事が起こる直前か最中にはやっと思い出せるんだから。もちろん、何もなくても思い出せることもあるんだけれど。

たんっと着地し、そのまま"色"に沿って走っていく、上へ飛ぶ。今剣はあまりの衝撃だったのか、どうやら今ようやく動き出したらしい。

もういい加減疲れている私は、屋根の上を走りながら叫んだ。

｢こんのすけっ、あと何分だ!!!｣

ぽふっと煙と共にこんのすけが飛び出してきて、慌てて私を追いかけるようにして走り、私に言う。

｢主さま、あと5分です！｣
｢5分……5分か！｣

意外といけてるじゃないか、私！

47色目 ｢これでも伊達にリアル逃走劇してきたわけじゃァないぞ｣。→←45色目 ｢思考能力の高さと疲労の溜まり具合は恐らく反比例している｣。

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