File.1 - 兄がいた。 ページ1
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私には、兄がいた。
少年時代は暗殺者として暗躍していて、大人になったらポート・マフィアで働いていた。
怒らせたらちょっと怖い兄だけど、そんな兄が私は大好きだった。
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「抜ける気はないのか。」
『ないよ。』
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兄がポート・マフィアに入ったのは十中八九私のせいだろう。
兄と5つ離れている私は15の時、兄に隠れてマフィアに加入した。
異能力者だから、森さんに誘われたから、理由は沢山あるけど重要視したのはたった一つ。
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『“兄は小説家になりたいんだ。迷惑をかけた分、やりたいことをしてほしいんだよ。“』
「“へェ..君はお兄さん想いなんだね。“」
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生きていることだけで罪だったあの頃、味方でいてくれたのは兄さんだけだった。
兄さんがいたから私は[生きる]ことを諦めなかった。
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不覚にもそう伝えた相手がその後、兄の友となる男___..太宰治だった。
私は彼同様[最年少幹部]としてポート・マフィアに身を置いていた。
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【 兄が死.ぬまでは 】
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面倒を見ていた子供達諸共殺.した男の元へ出向いた兄さんは、最悪な結末を迎えた。
私は仕事に出ていてその場にはいなかった。
見れたのは、もう目を開けない冷たくなった兄の姿だけ。
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「織田作から、これを預かったんだ」
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巻いていたはずの包帯を取った太宰が渡してきたのは兄の名が刻まれた手紙。
彼は兄を看取った張本人だった。
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手紙を見る前に、消しておいたはずの涙が溢れた。
泣き喚いて喉が枯れかけた私に太宰は何も言わず胸を貸してくれた。
冷酷で残酷で腹が立つ野郎なのに、兄の友達である太宰にはどうにも隠し事ができなかった。
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「私は[人を救う側]になるよ。..A、君はどうする?」
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兄の遺言を受け止めた太宰はそう言った。
あの太宰を変えた兄は本当に凄いと思う。いやこれ本当に。
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『一緒にいく。私は兄から君のことを頼まれたんでね、』
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いつ書いたかも分からない手紙。
その文末に兄はこう書き記していた。
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『“太宰の傍にいてやってくれ“___..君同様、私も兄の遺言に従おうじゃないか』
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[監視する][見張っておく]と勝手に解釈して、私は太宰と共にポート・マフィアを去った。
その後2年、手が汚れ過ぎている私達が地下に潜ったのは言うまでもない。
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「A〜、駅前にクレープ屋が『勝手に行けミイラ』
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武装探偵社。
太宰が選んだ[人を救う側]で私達の居場所が出来た。
File.2 - 異能力者と出会ったあの日[CASE.松田陣平]→
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作者名:夾 | 作成日時:2021年9月4日 11時