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Act.5 ページ22

煌々と照明が光る郵便局には、人っ子ひとりいない。

「……エマ?」

おかしい。エマはつい10分前に僕へ迎えの連絡をしてきたのに。彼女が約束を守らなかったことなんて一度もない。

脳裏に“能力者狩り”が掠め、慌てて路地裏を駆け抜ける。掃き溜めのようはそこらは暗い上に薄汚く、嫌なにおいが鼻についた。けれどそれさえも忘れるくらい僕は必死に走る。

「これ……」

通りの死角になるところで、エマが愛用していた革張りの鞄と身につけていたネックレスを見つけた。拾い上げて周囲を見回すけれど、そこに争った痕跡はない。

鞄は落としたまま拾われず、ネックレスはチェーンが千切れてここにある。それは穏やかな状態ではなかったことを証明していた。

「エマ……」

瞼を閉ざす。その裏に映るのは、僕のエマ(すべて)だった。いつもなら笑っているのに、今日に限って泣いている。ぽろぽろと綺麗な雫が、まろい頰を転がり落ちる。

「泣かないで――」

僕のかみさま。
僕の生きる意味。
僕の道標。

閉ざした瞼を開けば、明瞭な視界に、自然と口の端が吊り上がった。

「――今、迎えに行くから」

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芙蓉(プロフ) - 風姿 花伝さん» 嫉妬するくらいだなんて……本当にありがたいお言葉です。私の作品たちを美しいと仰って頂けることが何よりも励みになります!これからも精進して参りますので、どうぞよろしくお願い致します (2017年12月14日 19時) (レス) id: 4139a6982c (このIDを非表示/違反報告)
風姿 花伝(プロフ) - 嫉妬するくらい良い作品ですね。芙蓉様の書くものはどれも美しく、いつも感服させられます。更新頑張ってください。 (2017年12月14日 18時) (レス) id: 93face14bb (このIDを非表示/違反報告)
芙蓉(プロフ) - ゆ〜☆+゜さん» あっ、ありがとうございます……!こちらのミスでした。今すぐに直します!文章を綺麗だと仰って頂き、誠にありがとうございます。 (2017年11月5日 21時) (レス) id: 4139a6982c (このIDを非表示/違反報告)
ゆ〜☆+゜(プロフ) - 文章が綺麗にまとめられていて素晴らしいと思います。!誤字?なのかもしれませんがLact.6の四行目、「せ」が抜けていませんか?こちらの間違いでしたら申し訳ないです(;^_^A (2017年11月5日 21時) (レス) id: ea412efe3d (このIDを非表示/違反報告)
芙蓉(プロフ) - シマリスくんさん» コメントありがとうございます。急いで書いて色々と書き足してしまっていますが、そう言っていただけて幸いです。まだまだ作品が揃っていませんが、楽しんで頂ける作品を書けたらと思っております! (2017年11月5日 20時) (レス) id: 4139a6982c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:芙蓉 | 作成日時:2017年11月5日 18時

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