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中島敦:迷い込んだ世界で ページ20

_____敦side


『敦、此方だ!』


僕は、昔から妙なモノを引き寄せる体質らしい。

"ソレ"はいつの間にか僕を暗い世界に取り残し、僕を喰らおうと追いかけてくる。

・・・この日は何故か、見知らぬ少女と一緒に逃げることになってしまったが。

『ったく、捕まったらろくなことがなさそうだな・・・』

敦「・・・ごめん、いつもは僕以外誰も人がいないはずだから・・・巻き込んだね」

『・・・いや、別に・・・』

この子と会ったのはついさっき。僕が捕まりそうになったところを助けてくれた。

『そうだ。そういえば、此処から脱出する方法を知っているか?』

方法?

それなら確か、逃げていくうちに、この世界に迷い込んだときと同じくいつの間にか元の世界に戻れるはずだ。

僕は今までがそうだった。

敦「逃げていれば、いつの間にか戻るよ」

『・・・・・成程、それまで奴等から逃げる以外は無いというわけだな』

そう言うと、少女は僕の手を取ってまた走り出した。

敦「ちょ、何して・・・!?」

『逃げなければいけないのなら、あの場で立ち止まっていても仕方ないだろ?走れ』

少女の言う通り、走らなければ。

僕は足を虎化して少女を抱える。

奴等が僕達の姿を認識して、追いかけてくる。

『敦、このまま左折だ。だがスピードは落とすな。奴等は割りと賢いからな』

少女の言われるがまま、走り続ける。

壁を登ったり、飛び越えたりしながら上手く避けている。

『ふむ・・・』

途端に少女が黙った。

敦「どうしたの?」

『・・・敦、これは少しマズイかもしれない』

"どうやら、遊ばれていたようだ"と少女言う。

まさかと思い、一度足を止めて周囲を見渡せば囲まれていた。

『この場に誘導するためだったのか。本当に奴等は賢いな』

平然と笑っている少女は、僕の腕から降りて地面に立った。

敦「笑い事じゃ・・・『敦』」

『此処までありがとな』

さっきまでとは違い、綺麗な顔で微笑むと、僕を後ろに押した。

後ろには開いた扉。なかは真っ暗な闇。

敦「何を・・・してるんだ・・・?」

そう思った瞬間。

『なぁ敦、何故私はお前の名前を知っていたと思う?』

少女の言葉に驚いた。

確かに僕の名前を知っていたこともそうだが、あれだけ自然とはいえ何度も呼ばれたのに違和感がなかった。

それどころか、それが当たり前のように・・・。

敦「あ、」

思い出した。少女は僕の姉だ。

ずっと昔に死んでしまった、姉だ。

刹那、姉は奴等に喰われた。

樋口一葉:失ったものは→←太宰治:もういい?



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黒月夜*(プロフ) - 七海@月と星−−君と幸福な世界さん» 駄作なわけないじゃないですか!!そしてまさかのBlu-rayの予約・・・!? (2019年3月13日 23時) (レス) id: f34cbf336c (このIDを非表示/違反報告)
黒月夜(プロフ) - コメントありがとうございます!!ゆ、遺言!?死なないでください!!というより、遺言がそれでいいんですか?! (2018年12月13日 22時) (レス) id: f34cbf336c (このIDを非表示/違反報告)
河童系人間。(プロフ) - むり…尊い…すき……(遺言) (2018年12月13日 20時) (レス) id: 66413608c9 (このIDを非表示/違反報告)
黒月夜(プロフ) - ハニーさん» あ、なんかすみません・・・・・( ・−・) (2018年11月22日 23時) (レス) id: f34cbf336c (このIDを非表示/違反報告)
ハニー - 澁澤さんの童話むり…しんどい…(´Д` ) (2018年11月22日 10時) (レス) id: f040ea1a18 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒月夜 | 作成日時:2018年5月10日 21時

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