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太宰治:もういい? ページ19

『・・・・・嫌いだ』


ふと、A呟いた。


太宰「えぇー何がー?」


探偵社のソファにだらりと寝そべる太宰。


他の社員は依頼のため、この場には二人きりだ。


『太宰が』


太宰「いつも言われてることなんだけど・・・・・」


そう、Aは太宰を見る度に"嫌い"を言い続けた。


『冗談だと思っているらしいけど、生憎と冗談じゃなくて本気なの』


"太宰が存在しているだけで吐き気がする"


太宰は思ってもなかった言葉に目を見開いた。Aは嘘なんてついてないように見えたから尚更。


『じゃ、私も用事があるから』


太宰「え、ま、待って!」


去ろうとするAの細い腕を掴み、強引にも阻止する。


太宰「いつも軽く流してたけど、私は君が・・・」


『気持ち悪い』


遮り、腕を無理矢理にでも離す。


『じゃあね。もう二度と会わないよ』


扉が閉まるまで、太宰はその意味がわからなかった。だが、理解した。


Aは探偵社から離れる気だ、と。









『はっ、はっ・・・・・』


無我夢中で走り、人気のない場所で足を止める。


そして携帯を取り出した。


『もしもし、首領』


繋がった先は、ポートマフィア。


『探偵社へ潜入。目的の物は手に入れました』


探偵社の霧雨Aなんて、真っ赤な嘘。彼女は長い間マフィアの一員なのだ。


『はい、はい・・・では』


通話を切ると、何だか虚しさが広がった。


太宰がマフィアにいた時、彼女は何てことない構成員の一人で、太宰とも面識があった。


太宰が裏切った時に、Aもマフィアを裏切るという嘘をついて探偵社に入社したのだった。


『最初は友人だったのに・・・・・クソ、嫌いだ!アイツなんて大嫌いだ!!』


思い出すのは仲が良かった過去のこと。


『大嫌いなのに、裏切ったくせに、何で、何で・・・』





『今さら好きとか言わないでよ、馬鹿・・・・・!!』




嫌い、なんて探偵社から、太宰から離れるための自分への暗示。


彼女もまた、太宰が好きであった。


『もういいでしょ、私を苦しめないでよ』


そんなことは叶うわけもなく、空中で消えていった。

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黒月夜*(プロフ) - 七海@月と星−−君と幸福な世界さん» 駄作なわけないじゃないですか!!そしてまさかのBlu-rayの予約・・・!? (2019年3月13日 23時) (レス) id: f34cbf336c (このIDを非表示/違反報告)
黒月夜(プロフ) - コメントありがとうございます!!ゆ、遺言!?死なないでください!!というより、遺言がそれでいいんですか?! (2018年12月13日 22時) (レス) id: f34cbf336c (このIDを非表示/違反報告)
河童系人間。(プロフ) - むり…尊い…すき……(遺言) (2018年12月13日 20時) (レス) id: 66413608c9 (このIDを非表示/違反報告)
黒月夜(プロフ) - ハニーさん» あ、なんかすみません・・・・・( ・−・) (2018年11月22日 23時) (レス) id: f34cbf336c (このIDを非表示/違反報告)
ハニー - 澁澤さんの童話むり…しんどい…(´Д` ) (2018年11月22日 10時) (レス) id: f040ea1a18 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒月夜 | 作成日時:2018年5月10日 21時

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