兄の死 ページ8
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気付けば薄暗い廊下にいた。
Aは驚いて周りを見渡した。
ゆっくり下へ下ろされて、五条が廊下を進んで行く。
その後をついて行くと、到着した部屋のドアが開く。
そこは解剖室だった。
入室の音に、眼鏡を掛けたスーツの男が驚いて振り返った。
「ごっ五条さんっ!」
「伊地知、外出ろ」
クイッと顎で指示を出せば、伊地知は怯えながら部屋を飛び出して行った。
五条はAの背をそっと押した後、自分も部屋を出て行き扉が閉まった。
気を利かせてか、一人にしてくれたようだ。
『……』
部屋に残されたAは、ゆっくりと奥の台へ進む。
台の上に横たわる人物の足が、上に掛かる白い布からはみ出ていた。
Aはゆっくりと布を捲った。
まるで眠っているかの様な、穏やかな表情をする兄が居た。
胸に一つ大きな穴が開いている以外に、目立った外傷はない。
何の傷もない兄の大きな右手に触れた。
――冷たい。
当たり前の事ではあるが、ここで漸くAは自覚してしまった。
その瞬間、今まで我慢していたものが溢れ出して来た。
__一緒に居てやれなくてごめん。
『お兄ちゃんのバカッ……謝るくらいならっ……』
ボロボロと目から涙が流れ握った手の上に落ちた。
『もっと一緒に居てよっ……ひとりは、嫌だよっ……ひぐっ……お兄ちゃんっ、嫌だよっ……』
幼子が駄々を捏ねる様に、何度も兄を呼びながら泣いた。
袖で涙を拭っても涙が止まる事は無かった。
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廊下に出た五条と伊地知は、扉越しに聞こえる少女の泣き声を、
ただ静かに聞くことしか出来なかった。
五条は握る拳に力が入り、元凶である上層部への怒りが沸々とわいていた。
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愛菜(プロフ) - 脹相大好きなので妹ちゃんとの絡みが待ち遠しいです…!! (2021年3月31日 4時) (レス) id: 6adb5175f1 (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ - すっごい面白かったです!更新頑張ってください!! (2021年3月16日 23時) (レス) id: eb3104731e (このIDを非表示/違反報告)
ムスビ - 最後まで描き続けてください誤字てしまったので書き直しました (2021年3月12日 10時) (レス) id: 7c4a754810 (このIDを非表示/違反報告)
ムスビ - この小説は最後まで続けて欲しいですだから絶対かかったきてください応援しています (2021年3月12日 10時) (レス) id: 7c4a754810 (このIDを非表示/違反報告)
ネコぱふぇ(プロフ) - ムスビさん» 嬉しいコメントありがとうございます! 頑張ります! (2021年3月11日 22時) (レス) id: 3da7122dd2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ネコぱふぇ | 作成日時:2021年1月27日 23時