怪盗と街歩き ページ39
.
「そんな人がいれば、宝石のかわりに時間をくれなんて言った時点でまず貴方の顔を思い切り引っ叩いたわ…! 今更、そんな質問をするなんて」
意図せぬ不躾なキッドの問いに、Aは多少荒々しく棘を持って言い返した。
まるでAが複数名とこんな付き合いを持っているような言い方ではないか。
少なくとも、友人以上の贈り物を受け取ることや、深夜に部屋で会うこと、時たま手を触れ合わせること、そして挨拶以上に抱き締めあうことなど、全てAはキッドにしかしたりさせた事がなかった。
それを今更聞かれると、立つ瀬がないような気がした。
「……私は、恋人がいてもこうして貴方とこっそり会うような女に見えるのかしら?」
そう独り言のように聞いたAの顔には、僅かばかりのショックと自分に対する不安感が見えた。
キッドは打って変わったAの様子に焦り、慌てて首を横に振った。Aの手を掴み、先程までは取り繕っていた言葉を捨て、ありのままに気持ちを打ち明けた。
「すみません、決してそんなつもりは……ただ、貴方の口からそうではないことを教えて欲しかっただけで、他意はありません。どうか気を悪くしないで」
「……本当にない?」
「えぇ、ありません」
Aの、キッドを疑うというよりも窺うような視線に、キッドは罪悪感でキュッと胸が締まるような気がした。
しかし、Aはキッドの顔を見上げ、それから「そうね」と納得したようだった。
「大丈夫、本当は一瞬気にかかっただけよ。それに…私よりも傷ついた顔されちゃうと、これ以上は言えないもの」
キッドはAが次に見せた悪戯な笑みとその軽口に、自分の表情が情けないものに変わっていたことに気がつき、顔を固まらせた。
Aはあからさまなキッドをみて吹き出した。キッドは、手で口元を隠して目線をそらした。
普段己の信条にしている鉄仮面が、Aの前では呆気なく剥がされてしまうようだった。敵わないな、とキッドは心の中で思った。
410人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
恋 - 一気読みしました!めちゃくちゃ続きが読みたいです!待ってます! (2022年9月13日 8時) (レス) @page48 id: 08a0986ba6 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します!とても面白かったです!もし続編があるのなら、続きを楽しみに待っています!(*´ω`*) (2022年2月10日 14時) (レス) @page48 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - shibuyuさん» ありがとうございます!続き早くお見せできるように更新頑張りますね(´˘`*)! (2019年7月11日 0時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)
shibuyu(プロフ) - 怪盗キッド!私も大好きなので萌えます!早く続きが見たいなー!なんてっ♪ (2019年7月8日 17時) (レス) id: 8ac4695b82 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - くろばさん» ひゃ〜〜めちゃくちゃ嬉しいお言葉ですありがとうございますー!これからもドキドキキュンキュンしていただけるように頑張りますので楽しみにしていただければ幸いです〜! (2019年7月4日 22時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ