雨夜と怪盗 ページ34
.
対して一日前。日本時間で夕方五時、ようやく明日の午後に出発という時に、快斗は災難に見舞われた。
「今朝、画家及川武頼氏の元に怪盗キッドの予告状が届けられたとの通報がありました。内容は『明晩二十時、十五夜の月明かりの下で『晴嵐』を頂きに参上する』とのことで、…」
いつから報道していたのか、帰宅後点けたニュースに丁度その報道がなされていたのである。
快斗は具合の悪さに持っていた鞄をドサリと落とした。
「また偽の予告状かよ!」
ビックジュエルでもなければ金持ちに不当に所持されている物でもない。しかも出来立ての画家の作品という。
快斗は食い入るようにテレビを見た。
「明晩二十時つったら、明日の夜じゃねーか…」
明日の二十時には、快斗は飛行機に乗っている最中の予定だったのである。
何と不運なことか、今度は十五夜、と満月を指定されていることに、快斗は顔を渋らせた。そして、一旦寺井と相談せねばと思い至り、携帯を手に取るのだった。
しかし。
偽予告状が届いたとされる奥多摩町を予告時間の二十時きっかりに出発しても、成田空港に着くのに車で約二時間はかかるのである。
東京の西端から千葉に行くのだから、実質埼玉県さいたま市の方が半分以上も近い。
寺井に手配して貰った最終便の時刻は二十二時きっかり。その十五分前には飛行機に搭乗しなければいけない。
八方塞りの状況だが、Aと会うと約束したからには、快斗はそれを反故することは許されなかった。
そして翌日、日本時刻三二時…つまり翌々日の朝八時。イギリス時刻深夜十二時。
快斗は幸いにもイギリス行き航空便の機内にいた。
約十時間前、一心不乱に出発時刻である二十二時に空港へ着いたところ、天の思召しか日頃の行いが良かったのか、少なくとも後者はなさそうだが、イギリスの気候が悪く安全運航のために飛行機が遅延していたのだ。
飛行機の中で、時計の長針が真上を刺した時、快斗はついに間に合わなかったことに、沈んだ表情をした。
これならば、日本から屋敷に国際電話でもかければ良かったかもしれない。
今頃快斗を、いや、怪盗キッドを心待ちにしているAの事を想像すると、心苦しかった。
どうか早く着いてくれ。
窓の外から見える晴れ渡った雲上の景色を、快斗は焦った気持ちで手を握り締めながら眺めるのだった。
412人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
恋 - 一気読みしました!めちゃくちゃ続きが読みたいです!待ってます! (2022年9月13日 8時) (レス) @page48 id: 08a0986ba6 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します!とても面白かったです!もし続編があるのなら、続きを楽しみに待っています!(*´ω`*) (2022年2月10日 14時) (レス) @page48 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - shibuyuさん» ありがとうございます!続き早くお見せできるように更新頑張りますね(´˘`*)! (2019年7月11日 0時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)
shibuyu(プロフ) - 怪盗キッド!私も大好きなので萌えます!早く続きが見たいなー!なんてっ♪ (2019年7月8日 17時) (レス) id: 8ac4695b82 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - くろばさん» ひゃ〜〜めちゃくちゃ嬉しいお言葉ですありがとうございますー!これからもドキドキキュンキュンしていただけるように頑張りますので楽しみにしていただければ幸いです〜! (2019年7月4日 22時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ