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雨夜と怪盗 ページ33

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 今回は椅子を並べて、窓のカーテンは開いたままにしてAは待った。
 これで、キッドが来ればすぐに開けて座らせられる。片方の椅子に腰掛け、Aは窓を眺めた。

 しかし以前のような満月どころではなく、今や雨雲が立ち込め、雨が降り始めていた。
 Aの部屋の、庇付きの窓にも水滴の筋が流れている。
それを見てAは不安になったが、キッドを信じて待つことにした。


 Aは待った。
 しかし三十分が過ぎて深夜零時になっても、窓の奥に広がる暗闇に白い影が現れはしなかった。

「…………」

 雨で邪魔されているのかもしれない。
 Aはそう思うことで不安を取り払い、心を強くあろうとした。

 しかし、五分、十分、三十分と過ぎる内に、その心も次第に縮んでいった。

 そして一時間が過ぎてもキッドはAの元に現れなかった。


 Aはキッドが何故来ないのかわからなかった。
 雨が理由だと思いたかったが、あいにくあれほど横殴りだった雨はもう小雨になっていた。

 Aは外の空模様と同じくらい薄暗い気持ちで、ベッドに近づき、なだれ込んだ。

「はぁ……」

 ピリピリと身体に走っていた細かな緊張が解けて、Aは無意識に深々と息を吐いた。

 結局来ないキッドに対して、裏切られたような気持ちと彼を信じる気持ちがぶつかり合って、頭の中がいっぱいだった。

 来ると約束した。
 確かに来ると思う口ぶりだった。
 それじゃあ、どうしてキッドは来ないのだろう。
 きっと何か理由があるはず。

 本当は一ヶ月の間に気が変わっただけなんじゃないのか。

「……ッ…」

 意識は目を背けたいことばかりに向かい、次第に頭が一杯になる。終にAはどうせ考えても彼は来ないと考え、思考を打ち切った。

 そして目の奥に溜まっていた眠気へ逃げるように、目を閉じた。


 

雨夜と怪盗窟←第十一話 雨夜と怪盗



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- 一気読みしました!めちゃくちゃ続きが読みたいです!待ってます! (2022年9月13日 8時) (レス) @page48 id: 08a0986ba6 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します!とても面白かったです!もし続編があるのなら、続きを楽しみに待っています!(*´ω`*) (2022年2月10日 14時) (レス) @page48 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - shibuyuさん» ありがとうございます!続き早くお見せできるように更新頑張りますね(´˘`*)! (2019年7月11日 0時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)
shibuyu(プロフ) - 怪盗キッド!私も大好きなので萌えます!早く続きが見たいなー!なんてっ♪ (2019年7月8日 17時) (レス) id: 8ac4695b82 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - くろばさん» ひゃ〜〜めちゃくちゃ嬉しいお言葉ですありがとうございますー!これからもドキドキキュンキュンしていただけるように頑張りますので楽しみにしていただければ幸いです〜! (2019年7月4日 22時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒猫@さかなねこ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年5月22日 2時

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