第十話 怪盗と約束 ページ30
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昼の十二時を回り、主人達の昼食の最中、使用人達も使用人ホールへ昼食をとりに集まっていた。
食事後、各々自室に戻ろうとする者や歓談を楽しむ者で騒めくホールの一隅にAとアンナも座っていた。
「そうだ、A。これが届いてたわ」
今朝の郵便受け係だったアンナは、他の使用人に各自宛の手紙を渡しながら、Aにも手渡した。
白無地の封筒に、ここの住所とAの名が記されている。しかし、妙なことに送り主の記載がない。
父だろうかとAは不思議に思いながら、封筒を開いた。
中には十数枚の写真が入っていた。一番先頭にあった、折り畳まれた手紙を密かに手元で広げた。
『まずはアメリカ、NYから』と、ただその一言だけの手紙の隅には、例のKというイニシャルが記されていた。
Aは急いで手元の写真を次々確認した。
遠望に見える自由の女神、マンハッタンのセントラルパーク、有名場所ばかりではなく街の風景や夜景も入っていた。
世界を見せるといった彼の中々頓知の働いた手紙に、Aは短い笑い声を漏らした。
手紙を配り終えたアンナが、Aの手元を覗き込んで腑に落ちた顔をした。
「やけに分厚いと思ったら写真が入ってたのね」
「えぇ、世界をみせてくれるんですって」
「世界を…? 随分ロマンチストな友達じゃない、羨ましい」
また女神像の写真が先頭にきた時、アンナがニューヨークね、と呟いた。
「そういえば、自由の女神像といえばこの間アメリカでひと騒動あったわね」
「そうだったの?」
「どっかの屋敷にある純金の女神像を盗むってキッドの予告が入ったのよ」
土台に大きなダイヤが付いており、時価十数億の代物だったそうだ。
Aはそれを聞いて手元の写真を取り落としそうになった。
「……それ、どうなったの?」
「それが昨日郵送で戻ってきたんですって。今朝ニュースでやってたじゃない」
つまり、Aの手元の写真は、キッドが盗みに出かけた先の写真なのだろう。なんて物を送ってきてるのだ。冷や汗を拭いながら、Aは深々息を吐いた。
手紙はそれから三週間の合間に二度届き、どれも日本の風景だった。手紙が届くおかげで、Aは寂しさよりも、次の満月が楽しみだった。
一つ満たされなかったものといえば、当然のごとくキッドの姿は映っていない点だったが、それはキッドがAの元に現れてくれるまで、我慢せざるを得ないことだった。
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恋 - 一気読みしました!めちゃくちゃ続きが読みたいです!待ってます! (2022年9月13日 8時) (レス) @page48 id: 08a0986ba6 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します!とても面白かったです!もし続編があるのなら、続きを楽しみに待っています!(*´ω`*) (2022年2月10日 14時) (レス) @page48 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - shibuyuさん» ありがとうございます!続き早くお見せできるように更新頑張りますね(´˘`*)! (2019年7月11日 0時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)
shibuyu(プロフ) - 怪盗キッド!私も大好きなので萌えます!早く続きが見たいなー!なんてっ♪ (2019年7月8日 17時) (レス) id: 8ac4695b82 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - くろばさん» ひゃ〜〜めちゃくちゃ嬉しいお言葉ですありがとうございますー!これからもドキドキキュンキュンしていただけるように頑張りますので楽しみにしていただければ幸いです〜! (2019年7月4日 22時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)
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