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第八話 消えない怪盗 ページ23

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 怪盗キッドの現れた一夜から数週間が過ぎ、当初は記者が押し寄せたりと喧騒の日々だったが、今では以前のような静寂さを取り戻していた。

 あれ以来目に見えて変わった所といえば、キッドに狙われた代物としてナーシェレを玄関ホールに飾るようになったり、その分屋敷のセキュリティが厳重になったのが挙げられるだろう。

 そして、目に見えぬところで変わっているのは、Aだった。


「はー………」

 休憩室で盛大に溜息を出したのは、Aではなく、同僚メイドのアンナである。

 本を読んでいたのをやめ、Aは何事かとアンナを見た。アンナはAが自分を見た途端、眉間に皺を寄せて机に突っ伏した。

「アンナ、一体どうしたの」

「ねえ、相談なんだけど…Aならどうするか教えて欲しいのよ。あのね…」

 そう言いアンナが話し始めたのは、どうやら最近気になりだしたらしいホールボーイのチャーリーについてだった。

 Aが相槌を挟みながら、話を聞くこと数分、徐々にアンナの話には熱量が増してきた。

「それでね? あの人ったら以前はよく声をかけてきたくせに、私が彼を好きになった今じゃ、話す最中にロクに目も合わせてくれないのよ」

 もう私の事はどうでもいいのかしら、と悲観的に机に伏せるアンナの肩をAは励ますように軽く叩いた。

「でもね、彼はよく貴方の話を私にするし、貴方の好きなものを聞いてくるわ。きっと恥ずかしがってるのよ」

「……ほんとにそう思う?」

「うん」

 そう、と素っ気なく呟いたアンナだったが、Aの目には彼女が何処かホッとしているように映った。
「やっぱ持つべきは友ね」とアンナは呟いて、Aを見た。

「そうだ! Aは何かないの?」

「何かって…」

 好きな人よ、好きな人。話を催促するアンナに、Aは苦笑いを返した。
 話に花を咲かせる気のないAにアンナは肩を落とした。

「もし気になる人とか出来たら、一番に教えてよ。絶対結んであげるから」

 気になる人というアンナの言葉に、途端Aの脳裏にはサッとキッドの姿が浮かび上がる。
 Aは自然と彼を考えた自分に面食らった。


 

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- 一気読みしました!めちゃくちゃ続きが読みたいです!待ってます! (2022年9月13日 8時) (レス) @page48 id: 08a0986ba6 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します!とても面白かったです!もし続編があるのなら、続きを楽しみに待っています!(*´ω`*) (2022年2月10日 14時) (レス) @page48 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - shibuyuさん» ありがとうございます!続き早くお見せできるように更新頑張りますね(´˘`*)! (2019年7月11日 0時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)
shibuyu(プロフ) - 怪盗キッド!私も大好きなので萌えます!早く続きが見たいなー!なんてっ♪ (2019年7月8日 17時) (レス) id: 8ac4695b82 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - くろばさん» ひゃ〜〜めちゃくちゃ嬉しいお言葉ですありがとうございますー!これからもドキドキキュンキュンしていただけるように頑張りますので楽しみにしていただければ幸いです〜! (2019年7月4日 22時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒猫@さかなねこ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年5月22日 2時

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