怪盗の置き土産 ページ22
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翌朝、空港に向かう途中、路上で売られている新聞のある一面記事が目に飛び込んで快斗は咄嗟に足を止めた。
「『お手柄メイド、誘拐されるも宝石とともに帰還。怪盗キッドを撃退か』…ね」
お手柄メイドとして一面記事の写真には、Aの困り笑顔が映っている。リクライニングチェアに深々と腰掛けながら、その記事に目を通した。
彼女のコメントと思しきものは見当たらない。それもそうか。嘘をつけるような性格ではなさそうだし、Aがキッドとのことを話してしまうとは考え難かった。
「でも、ここがちっとばかし気に食わねーな…」
快斗は写真をトントンと指で弾いた。そこには、Aと並んで中森警部の破顔が大きく映っていた。
今にも飛び出してきそうな構図だ。彼女だけなら良かったのに、と肩を竦めて溜息をついた。
「………」
Aの戸惑い顔をもう一度眺めて、快斗は写真をそっと撫でた。
「ぼっちゃま、どうかしましたかな?」
「エ? い、いや…ちょっと…」
隣で寝ていた筈の寺井が、快斗に尋ねてくるから、快斗は咄嗟に新聞を捲った。
しかし寺井は既にその一面記事を見ており、彼は小声で快斗に話しかけた。
「快斗ぼっちゃまも今回はやられてしまいましたか」
「そうそう。最初は死ぬかとおもって…」
快斗の脳裏に蘇るのは、展望台での猛攻撃だった。まだ一日も経っていないが、随分と懐かしく思えた。
快斗がしみじみと物思いに耽けっていると、寺井が何気なく問いかけた。
「しかしぼっちゃま、そのお嬢さんを連れて行ってから数時間も何をしとったんです。この寺井は心配で心配で…」
「そりゃ、あれだよ…アレ…」
このメイドと数時間も無防備に街をふらついたなどと言えば、卒倒ものである。
言葉を濁らせる快斗に寺井は首を傾げたが、近くに客室乗務員のサービスがくると、そちらに意識をそらした。
快斗は安堵の息をついて、寺井が気を逸らしている内にもう一度先ほどの記事をみた。
写真に写るAは快斗が被せたコートを着たままで、その袖から覗く細い手首には、まだ何もついていない。
次に会う時に、Aがあのブレスレットをつけて自分を迎え入れてくれたら、と想像する。快斗は今すぐにでも此処から飛び出して彼女のいる屋敷へと行きたい気分だった。
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恋 - 一気読みしました!めちゃくちゃ続きが読みたいです!待ってます! (2022年9月13日 8時) (レス) @page48 id: 08a0986ba6 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します!とても面白かったです!もし続編があるのなら、続きを楽しみに待っています!(*´ω`*) (2022年2月10日 14時) (レス) @page48 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - shibuyuさん» ありがとうございます!続き早くお見せできるように更新頑張りますね(´˘`*)! (2019年7月11日 0時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)
shibuyu(プロフ) - 怪盗キッド!私も大好きなので萌えます!早く続きが見たいなー!なんてっ♪ (2019年7月8日 17時) (レス) id: 8ac4695b82 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - くろばさん» ひゃ〜〜めちゃくちゃ嬉しいお言葉ですありがとうございますー!これからもドキドキキュンキュンしていただけるように頑張りますので楽しみにしていただければ幸いです〜! (2019年7月4日 22時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)
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