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怪盗から警察へ? ページ19

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 キッドに手を引かれ、導かれるまま角を曲がると、大通りまでは行かずとも人の往来が多い道へとでた。
 街灯の元で不意に立ち止まり、キッドは後ろを振り向いた。

「そのココア飲みきったんなら、貸せよ。今通るときゴミ箱あったから捨ててくるぜ」

「そこで待ってろ」と言って、キッドはちょっと先に置かれている鉄色のゴミ箱に向かって駆けていく。Aは人に紛れていくその背を見送りながら、今夜のことを思い返した。

 考えればこの数時間、不思議なことばかりである。怪盗に誘拐され、宝石を取り戻し、そのまま怪盗と街を散策するなんて、昨日の自分が聞けばひっくり返るだろう。

 それに、とAはコートのポケットに手を沿わせ、箱の感触を確かめた。この贈り物もそうだ。

 Aは長く息を吐いた。散々歩いているが、脚の痛みは少しもなかった。
 我ながらすっかりキッドとの時間を楽しんでしまっているな、とAは自分に苦笑した。


 その時。
 突然側を歩いていた何者かがAの腕を掴んだ。
 Aは瞠目し、その不審者をみた。

「!」

「〜……!! __!」

 Aの腕を掴んで彼女を見ていた男は、トランシーバーを持ち、Aに聞き取れぬ言葉でそれに向かって叫んでいる。
 叫び声をあげそうだったが、警察だと気がつき、Aは思わず周囲を見た。

 キッドがこの事態に気がついていなかったら、と思うと、不安な気持ちが渦巻き、心臓が早まった。

 彼の行ったゴミ箱の方をみるも、姿が見えない。

 と言うことは、警察に気がついて逃げ出してくれたのだろうか、と落ち着かない気持ちで、忙しなく辺りを見ましたその時だった。

「__残念ですが今夜はここまで。また、月下の元でお会いしましょう……お嬢さん」

 Aの耳元で、キッドの声がした。

 ハッと振り向くと、悠々とした足取りで人混みの中に溶けゆく彼の背中がみえる。

 Aを保護した警察官は、トランシーバーとの通信でこの一瞬の出来事には一切気がついていないようだった。


 

第七話 怪盗の置き土産→←怪盗から警察へ?



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- 一気読みしました!めちゃくちゃ続きが読みたいです!待ってます! (2022年9月13日 8時) (レス) @page48 id: 08a0986ba6 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します!とても面白かったです!もし続編があるのなら、続きを楽しみに待っています!(*´ω`*) (2022年2月10日 14時) (レス) @page48 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - shibuyuさん» ありがとうございます!続き早くお見せできるように更新頑張りますね(´˘`*)! (2019年7月11日 0時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)
shibuyu(プロフ) - 怪盗キッド!私も大好きなので萌えます!早く続きが見たいなー!なんてっ♪ (2019年7月8日 17時) (レス) id: 8ac4695b82 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - くろばさん» ひゃ〜〜めちゃくちゃ嬉しいお言葉ですありがとうございますー!これからもドキドキキュンキュンしていただけるように頑張りますので楽しみにしていただければ幸いです〜! (2019年7月4日 22時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒猫@さかなねこ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年5月22日 2時

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