現実ってそううまくいかない...わけでもないんだよね～黒バストリップ～Part6 (ページ38)

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▽茶川side

第1Ｑ残り14秒、11対18の7点差。

ついさっき(ほんの一瞬だけど)視線を感じた。れっきとした根拠はない。どこぞの鷹の目や鷲の目じゃあるまいし。

けど、何故か分かるのだ。なんとなく。
要するに、“野生の勘”ってやつである。

とは言っても、私に身体に関する特異体質が無いと言えば嘘になる。

彼らが人並み以上の視力を持っているなら。
私は、人並み以上の聴力を持っている。

__かたん、

(ほら、また“聴こえた”)

_____

ふと小さな乾いた音が聞こえ、音の方をちらりと見れば…フィギュアの残骸が。

｢カントク、それなんですか……?｣
｢ああ、この前折ったやつ…｣
｢折った！？｣

リコさんの口からさりげなく出た物騒な単語に、フリキ君が驚く。

そういや日向先輩……日向さんは、プレッシャーに耐える練習として、シュート外したら大事にしている戦国武将フィギュアを折ることにしているんだっけ…。

原作通りで言うと、きっかけは、去年の秀徳戦の敗退からだったかな。
因みに(物理的に)折ってるのは……リコさん。

「そういえば…」

はっとしたようにこちらを向いた彼女に嫌な予感しかしない。

｢…りんちゃん、力、強かったわよね？｣←
『絶ッッ対嫌です!!』

察した。(野生の勘)

(いや、確かに力強いけどね!? 折れってか!?日向先輩の宝と言っても過言ではないあの戦国武将フィギュアを!!私に!!折れと!?絶対無理!!)

そもそも、折るのがリコさんだから許されるんであって…。(ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ)

閑話休題。

何はともあれ、大事なシュートは必ず決める、というリコさんの言葉通りに、日向さんが打ったスリーポイントシュートはネットを潜った。

｢王者がなんぼのもんじゃい！｣
｢おい日向、本音出てる！｣
｢…そしてちょっとだけ性格が歪んだわ｣
｢……二重人格一歩手前じゃないですか、それ｣
『それな。』

コート内での日向さんと伊月さんの会話を聞いて、遠い目をしながら付け加えるリコさんに突っ込んだ鈴村さんに同意である。

これで２ゴール差…第１Ｑはまあまあだったと、皆がそう思った。

しかし。

日向さんがシュートしたボールを受けとめ、構える彼……緑間君が、余裕の表情で言い放つ。

｢そんな手前ではないと言ったのだよ｣

残り３秒、

｢俺のシュート範囲(レンジ)は、コート全てだ｣

彼の放ったスリーポイントシュートは、鋭くゴールの真ん中に突き刺さった。