現実ってそううまくいかない...わけでもないんだよね～黒バストリップ～Part6 (ページ31)

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「誠凛、メンバーチェンジです」

試合開始から数分弱。

タイミングがいいのか悪いのか。取り敢えず水戸部先輩と交代です。

試合は………PGの高尾が黒子のマークになってからというものの、誠凛が押され気味である。

原作通り……だけど。

なのに、何だろう、この胸のざわつきは。

｢お疲れ様｣
「………はい」

どうやら、考え過ぎていたらしい。カントク……リコさんへの返答がちょっと遅れた。

りっさんから受け取ったタオルを頭に被り、ベンチに座る。

｢不満そうな顏｣
「…………そう、見えちゃいます?」

ふふ、と笑いながら言うカントクに、思わず聞き返した。

彼女が人並み以上の洞察力を持っているのは(身を以て)知っている。

だから、俺が“無意識に”自分の身体の動きを抑え込んでいることも、見ていて解ってしまったんだろう。

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『原作を、楽しんでこーぜ!!』

「「おうよ!!」」

そう言って拳を合わせてから、既に1年以上経っている。

原作を楽しむ。それは、シナリオ通りに進めることを意味する。

つまり、原作という名のシナリオを大きく変えることはりっさん達との約束を破ることになるわけで。

ごく稀にシュートを入れたり、黒子からのパスを受け取ったりはしているものの、基本、試合の流れは変えない程度にプレイしていた……つもりだったのだが。

「ねぇ、」

｢拓くんは、何を考えながらバスケをやってるの｣
｢……｣

その結果がこれだ。彼女が鋭いのか、それとも、俺が分かりやすいのか。はたまた、両方なのか。

視線だけをリコさんに向けてみれば、彼女は、鋭い、それでも確かに綺麗なその目をコートに向け睨んでいた。