My Valentine, 【朔間凛月】 (ページ11)

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クイズ▼ ページ11

白いリボンがかけられた四角い箱と、赤いリボンがかけられた丸い箱。
それを前にしてうんうんと唸るAを見ていると微笑ましい。
少し考えたのち、全く分からない、とと言うような目で此方を見てくる。ヒントでもあげてやりたいところだけれど、こればかりは解答が二択なので出しようがない。

「間違えたらペナルティだからねぇ～」

「ペナルティの内容って何？」

「秘密～。間違えてからのお楽しみ」

隠していたつもりもないニヤニヤを見て、不貞腐れたように頬を膨らませるA。
ちらりとその双眸が此方を見たと思えば、すぐにまた二つの箱と睨めっこを再開する。
よほどペナルティが怖いのか。普段は割と即決派だと思っていたが、それは仕事に関してだけなのだろうか。
Aが何かを前にして悩むことなんて、衣装のデザインくらいだと思っていた。それくらい、長い時間考え込む様子を見る機会は少なかった。眉間に皺がどんどん寄っていくさまを観察するのが面白く感じてくるほどだ。

つん、と膨れっぱなしの頬をつついて「このほっぺの中、何詰まってるの？ヒマワリの種？」なんて意地悪を言う。

「……」

「お～い、無視？」

「……分かんない、けど」

けど。そう言って彼女は言葉を濁した。
普段は手に取るように分かってしまうほどダダ漏れな彼女の感情が、今はなぜだか分からない。
少しの不安と一滴の望みを混ぜた茶色の双眸が、スタジオの柔い蛍光灯に当てられてまっすぐ此方を向いた。

「問題の、答え」

それだけ言ってAは自分の鞄を取り出し、中身を漁る。
少し震えたかのように見えた手に収まっていたのは、ピンクのレースリボンに巻かれた淡い花柄の箱だった。