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「はぁ…」
ベッドに寝転んでため息が漏れる。まだ初日なのに疲労が凄い。あと4年もこの生活が続くと考えると中々きつい。でも、今更逃げるのは俺が嫌。部屋着に着替えて自分の部屋の浴室に入る。学園長からは部活はしなくていい。寮の大浴場は使わなくていいと言われてる。結構Ωに対して厳重。それを頼るのは少し嫌だけど、それに頼らないと生活出来ないのはΩの性。Ωだからって甘えるのも良くない。それに、舐められたくない。
風呂から上がって体を拭いてるとノックが聞こえた。
「A。わしじゃ」
「あ、リリア先輩。ちょっと待ってください」
パーカーを着てリリア先輩を部屋に招き入れる。何かと思えばエイナさんに貰った薬を持ってきてくれたらしい。
「エイナから聞いたんじゃが。持病を持っとるとな?」
「ま、まぁ…。ただの喘息ですよ」
「そうじゃったか。何かあれば直ぐに言うんじゃぞ。ほれ、薬じゃ」
「ありがとうございます」
俺は持病持ちらしい。喘息は嘘じゃないけど薬を貰うほどでもない。嘘をつくのは慣れてるけど、そう笑われると良心が痛む。けど、仕方の無い事なんだ。ここでバレてパーになりでもしたら俺は立ち直れない。エイナさんからのメモをノートに貼って本を読む。
「おい!」
大きいノックの音と誰かの声が聞こえて本の世界から意識を引き戻される。時計を見れば8時。夕食の時間で誰かが呼んできてくれたのだろう。でも、他の寮生達と俺は仲良くない。誰だろうとドアを開けたら背の高い緑髪の寮生。
「えっ…と?」
「早く来い!若様達がお待ちだ!」
「え、あ、はい」
若様?一体誰のことだろう。どこかの王子でもいるのだろうか。がやがやと楽しそうに夕食を摂っている寮生達を横目に緑髪の子の後を着いていく。食事処の奥。寮長の食事処の前で立ち止まった。嫌な予感がして戻ろうとすると力強く腕を掴まれて反射的に振り払う。
「っ…。あ…ご、ごめんなさい!」
驚いた顔してた。失礼な事しちゃった。どうしよう。食事処を出て行って部屋に戻る。マレウス先輩俺に何か用があったのかな。やばい。凄く失礼な事した。頭の中がぐるぐると混乱してるけど。さっき掴まれた手の熱が俺の体に不快感を残す。バクバクと心臓が脈打って痛い。呼吸が上手く出来ない。
「っ、はぁ…っはぁ…」
涙で視界が歪む。ふらふらと立ち上がって袋を口に当てて応急処置をする。さっきより呼吸がマシになった。でも、苦しい。ぽたぽたと涙が零れ落ちる。
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ピピ - やばいぐらい主人公が好みです! (2020年6月4日 16時) (レス) id: de2e77a72a (このIDを非表示/違反報告)
伶(プロフ) - おっふ(^^) (2020年6月3日 0時) (レス) id: 472a16cc4c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:田中 | 作成日時:2020年5月30日 11時