近寄るな。大嫌いなんだよ。 (ページ46)

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A君がお手洗いに行ってから結構時間が経ってる。フロイド君も迎えに行ったっきり帰って来ない。僕も見に行こうかと立ち上がろうとした時携帯の着信音が鳴り出す。

「失礼しました。フロイドですね。もしもしフロ…」

「ジェイド！！助けて！俺、まじ、無理かもっ…」

「フロイド？！何が無理なんですか？！」

困惑した顔で話しかけても唸る苦しそうな声が携帯から漏れ出す。まさかと思ってジェイド君の手から携帯をさし抜く。

「フロイド君？エイナです。今どこにいる？」

「ほ、けん…しつ」

「分かった。ありがとう。カイラはここにいて」

皆にはここにいてと伝えて保健室まで走る。フロイド君には持病とか検診の異常結果は見られてない。なら、他の原因だと言うのがすぐに分かる。かなり唸っていたし息も切れてて苦しそうだったから多分、フェロモンに当てられたんじゃないだろうか。でも、A君のヒートはもう終わってるし番と認知している訳でもなさそうだった。なら、なんで？

「フロイド君！」

「ふーっ、う"う"ぅ！」

意識の無いA君を腕の中で抱き締めて項を噛まないように自分の腕を噛んでいるけど元々の顎力は尋常じゃないから肉が薄く噛みちぎれてる。床には血が垂れて赤くなってる。これ以上はフロイド君にもA君にも良くない。

「フロイド君、別にとる訳じゃないよ。落ち着いて。ほら、ふぅー、ふぅー」

「っ、ふぅ…ふぅ、ふぅ」

目が見開いて充血していた興奮状態の瞳がゆっくりと褪せてく。このまま行けば大丈夫。フロイド君が優しくA君を離してフラフラと立ち上がる。少し離れた瞬間にシールド魔法をかけてフロイド君にまとわりついたフェロモンをかき消して扉の前まで送ると他の皆が突っ立ってた。

「はぁ…カイラ。フロイド君の手当してくれる？僕は、A君の事があるから」

「ちょ、ちょっと待ってよせんせー！Aって…Ωなの？」

「…そうだよ。本人は気にしてるからあんまり触れないであげて。フロイド君も辛かったよね、ごめんね」

「別に。小エビちゃんの事傷付けなくて良かった」

ベッドに寝転がせて床の血を拭く。何があったのかをフロイド君に聞く。言いにくそうに目線を泳がせる。

「言いづらいなら省略してもいい。ただ、何があったのかを知っておかないといけないんだ」

そう言われて唇を軽く噛んで話し出す。それは、随分と酷いもので。A君のお母様からは多少聞いていた。これは、お母様も交えて話をしないと。