42 ページ42
「体育会本番はついに明日だ!お前達、本気でやれよ!」
「はーい…」
時間の流れは早いものでもう本番。クラス対抗の種目も俺が出る種目も自分の中ではいい感じだと思う。本番には強いタイプだし、大丈夫だろう。早く、明日になって欲しい。
「んー。なに作ろうかな」
明日の体育会でのお弁当を作るんだけど人数が多いからお腹に溜まるものの方が良いかもしれない。5段もある弁当に作った物を詰める。大したものじゃないけど人の為に作るのは楽しい。マレウス先輩に頼まれた氷菓を1つ作って明日の朝にまた詰めるものと一緒に冷蔵庫になおす。マレウス先輩が氷菓が好きなのは意外だった。日頃の感謝にでもまた作ってあげよう。
「Aか。何か作っていたのか?」
「お弁当を作っていたんです」
「そうか。期待してるぞ」
「そんなに期待される程じゃないですよ」
「リリアから話は聞いたぞ?凄く美味いと」
「お、お世辞ですよ」
リリア先輩、そんな事言ってたのか。恥ずかしいな。人に振る舞えるほどの料理の腕は持ってないけどそう言って貰えるなら多少の自信を持っていいのかも。
「マジフト大会を覚えているか?」
「覚えてますよ。先輩、凄く強くてかっこよかったです!」
「…そうか。その時来ていた会社が体育会にも来るんだ」
「そうなんですね。じゃあ、結構王手なんですか?」
「あぁ、ハーグリット社だ」
ドクン、と鈍く重く心臓が動いた。ハーグリットってあの王手企業か?あいつの会社じゃないか。いや、大丈夫だ。あいつは来ない。父親が来るんだ。
「おい?大丈夫か」
「だ、大丈夫です!そうなんですね!めっちゃ大手じゃないですか」
「顔色が悪いぞ?」
「なんでもないです!」
声を上げて逃げた。心臓がバクバクと動いて苦しい。ハーグリット。シャーム・ハーグリットは俺のミドルスクールでの先輩。優しくて、頼り甲斐のある憧れた先輩だった。でも、あの時。あの時、俺を強 姦しろって言って自分もやってきたクズ。思い出しただけでも殺したくなる。ヒートじゃなかったらぶっ飛ばしてたのに。大丈夫、大丈夫。もし来ても俺は今ヒートじゃない。
「もう、思い出したくないよ…」
ぼろぼろと涙が零れる。頭にこびりついた鮮明な記憶が流れ出て嫌になる。また、逃げないように今吐き出してしまえ。弱い部分はさっさと流してしまえば楽になる。明日は、ちゃんと笑えるんだから。
338人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ピピ - やばいぐらい主人公が好みです! (2020年6月4日 16時) (レス) id: de2e77a72a (このIDを非表示/違反報告)
伶(プロフ) - おっふ(^^) (2020年6月3日 0時) (レス) id: 472a16cc4c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:田中 | 作成日時:2020年5月30日 11時