30 ページ30
最近、フロイドがおかしい。少し前から違和感を感じる事が多かったけどそこまで気にするものじゃなかった。でも、アズールが彼を呼んだ日から変になってきた。"小エビちゃん"フロイドは彼をそう呼ぶ。僕も彼の名前を知らない訳じゃ無い。どうして彼をそう呼ぶのか、と聞いてみたことがある。フロイドは俺より小さく、細いし。俺が近付くだけで肩を動かして驚くからと言った。
確かに彼は背がスラリとしている割には女性のように華奢で細い身体つき。顔も格好良いとかじゃなく。綺麗という言葉が彼には似合う。色も白く少し長い真っ黒な綺麗な髪。綺麗な瞳でどこか淋しげな瞳をする。そして、何より。彼からは嗅いだ事の無い香りがする。別に嫌いな匂いとか、嫌な匂いな訳じゃない。寧ろ、ずっと嗅いでいたい独特な香り。けれど、彼からは第2性を感じる匂いが全くしない。彼から感じる匂いが第2性の香りだとして。彼の第2性は何になる。αかβ。または、Ω。けど、Ωが入学するなんて事はまぁ、そう有り得ない。けど、αやβとしての匂いなのであれば彼から香る匂いはその2種には該当しない。
フロイドが彼を気になるのも分かる気がする。フロイドは、僕よりも鼻が優れている。だから、僕が気付くよりも前に彼の匂いに気付いていたのだろう。だけど、ここ最近のフロイドはなんだかおかしい。
「フロイド。もう終わりですよ」
「え、あ…うん」
こんな風にぼーっとしていていつものフロイドじゃない。アズールにはあんまりバレていないようですがバレるのも時間の問題でしょう。
「何かあったんですか?」
「別に」
「ですが、最近フロイドの様子が普段と違います」
「…あのさぁ」
ダメ元で直球で聞いて良かった。普段なら口を割らないのに。黙ってフロイドの話を聞く。
「ジェイドって運命の番って信じる?」
「へっ?」
想像していたものより随分と的外れなことを言われて素っ頓狂な声が出る。
「信じていない訳じゃないですが。簡単に見つからないと思います」
「だよねぇ…」
まさか、と思って厨房から出ていこうとするフロイドの腕を掴む。
「まさか…ですけど。フロイド運命の番を見付けたのですか?」
「…分かんねぇんだよ」
「分かんないって」
「小エビちゃんの事を考えたら胸が痛てぇの。しかも小エビちゃんを孕ませてぇってすげぇ思うの。俺まじ最低だよな…」
弱々しいフロイドにかける言葉が見つからない。だって、僕も彼に同じ事を。フロイドと同じ事を思ったから。
338人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ピピ - やばいぐらい主人公が好みです! (2020年6月4日 16時) (レス) id: de2e77a72a (このIDを非表示/違反報告)
伶(プロフ) - おっふ(^^) (2020年6月3日 0時) (レス) id: 472a16cc4c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:田中 | 作成日時:2020年5月30日 11時