Realize!

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消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ……




気分が悪い、頭の中をそんな言葉が反芻する。


目を覚ましたそこは、おそらく初めて入った保健室だった。

私はパイプでできた硬いベットに寝ていて薄い毛布がかかっていた。

なんだか背中がどくどくと痛んで、
やっと起き上がって床に揃えられたローファーを履いた。


カーテンを開けるとそこには誰もいなかった。


電気は、ついてるけど…

保険医用の机だろうか。その上のコーヒーからはまだ湯気が出ていた。

校舎の一階、体育の授業で怪我をした生徒が入りやすいようにグラウンドからも近い場所にある。

窓が開いていて、風が薄い青色のカーテンを揺らしていた。


「……ん？」


タバコの匂いがした気がする。
高校で喫煙なんて、生徒はもちろん教員だとしても問題だ。


また、風が保健室の中に入ってきた。

ふわりと舞い上がったカーテンの中に、
あなたがいた。


「え……」


それはあまりにも、美しくて


本当に同じ人間なのだろうかと
疑問に思うほどで


こんな人が……うちの学校にいたなんて_____



「……あ」


軽く振り返ったその冷たい瞳も
小さく呟いた掠れた声も


なにもかもが
信じられないくらい儚くて



「目、冷めたか」



息を、飲む。



「……えっと、気分は？」



その右手に、今にも灰が落ちそうなタバコが挟まれていた。

ほとん、とその灰が地に着いた。



「もしもし…？大丈夫か？」

「……あ、はい」

「ちょ、その辺座っといて」

「はい……」



言われたままパイプ椅子に座り込んだ。
また背中がどくっと痛んだ。



「……おまたせ」


しわしわになった白衣を洒落た柄のシャツの上に羽織っていてそれで初めて保険医だと悟る。


「……えーっと、気分悪ない？」

「あ、……はい」


ついさっきまでの胸騒ぎはこの人の美しさでかき消されたみたいだった。

それよりも、不慣れな仕草で鉛筆を握り、

あれ、あの紙どこやったっけ。
最近ほとんど生徒こおへんからな…
ちょお待っとって……

と一人でゆっくり動く彼から目が離せなかった。


「あった、これや……えーっと、ごめん名前なんやっけ」

「あ、河内です」

「河内……下は？」

「A」

「A……ね」


その薄い唇を震わせて
私の名前を呟いた、それだけで

何かが変わってしまいそうだった。

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