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透明な私は、午前中自分のクラスに顔を出すことこそしたけれど…授業を聴く気にも慣れず、そっと自分の席に座っては、隣の席の安田くんの横顔を眺めていた。


ふと机の中に手を入れると、金属のひんやりした感触の他に紙に触れた。


音を立てないように机の中を覗き込む。


Aへ。


と書かれたルーズリーフ

私が消えてからの板書
私の、私の大好きな安田くんの字だった。

それだけで、
それだけで嬉しくて

思わず口元が緩んでしまって

ああ、透明になってよかった
なんてことさえも思う_____


昼休みになった。

安田くんは私の机にまた一枚ルーズリーフを入れて、教室の外へ出て行った。

その背中を名残惜しく見送りながら

私も教室を出た。
今までと、何か違うことをしたい。
せっかく透明なんだから


そんな理由だけで扉を開けた使われていなさそうな準備室には_____先客がいた。



「いらっしゃい」



_____そこにいたのは
国語の丸山先生だった。

丸山先生はまるで私がくることを予測していたような口ぶりで、

私はどうしたらいいか、わからない。


「座ってええよ、河内Aさん」

「……え、っと……あの……」

「俺には見えてへんねん、ごめんなぁ」


たしかに、丸山先生には私は見えていなさそうで、絶妙に目が合わない。


「これ、持っといてくれへん?音で大体場所わかるから」

「え、あ、あの」

「まあまあ。麦茶飲む?」


チリン、先生が差し出した鈴が鳴った。
私はおずおずとそれを受け取りそっと振ってみる。澄んだ音がした。


「なにから……お話しよっか」


優しそうな顔
見えない私を一生懸命音で探すその姿を
容易に信用したくなってしまう。


「……わ、わたしは………死んでしまったのですか」



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ねこひこ(プロフ) - たまごさん» まじ!!!短めだけどお気に入りのページだったからたまに褒めてもらえるのめちゃめちゃ嬉しい!!!!、、、! (2019年10月29日 17時) (レス) id: adbab09624 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - 18ページ目めっちゃ好き (2019年10月29日 1時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
ねこひこ(プロフ) - 菜春さん» 菜春様、コメントありがとうございます。以前も何かの作品でコメント頂きましたよね、覚えています!以前よりも格段にゆっくりペースでの更新ですが、楽しみに待っていていただけると嬉しいです。がんばりますね、これからまたお願いいたします! (2019年10月27日 17時) (レス) id: adbab09624 (このIDを非表示/違反報告)
菜春(プロフ) - ウワーーーー猫彦さん復活してて本気で鳥肌もんでした感動、、前のアカウント?のときから拝見させていただいてました( ; ; )ねこひこさんのかく文章が大好きなので嬉しいです!! (2019年10月26日 16時) (レス) id: 8f96908852 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ねこひこさん» わろた ちゅき (2019年8月23日 1時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ねこひこ | 作成日時:2019年8月6日 20時

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