100万回目の告白 8 ページ8
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「ちょっとレベル低かったね。明日からは来なくていいかな」
「でも、鎌田君」
「Aは受けなよ。Aのレベルだったらちょうどいいだろ」
俺は舌打ちをする。うっさいわ、ラクダが。
教室の後ろで鎌田はずっと、その調子だった。
何かにつけて、簡単すぎるだの、バカにしているだの、時間の無駄だの、大きな声でほざいていた。
その教室にいた殆どが、無視をして、そしてただ、苛立っていた。
なんでお前、そんなクズと付き合うてんねや。
なんでお前、言い返せへんねん。
ああそうか、馬鹿なふりしとるんやっけ。
うまいことやっとるやんな、尊敬するわ。
「……チッ」
口の中でしていたはずの舌打ちが、音になって漏れる。隣に座っていた友達がこっちを向いた。俺は口パクで、うるさいなあいつら、と伝える。
イライラしていた。
鎌田がうるさいことや、言葉の全てに周りを見下したような汚さを感じることに。
あいつが、そんな男の横にいるということに。
“天才少女”だったあいつが、
そんな男の横で、困ったように笑っていることに。
講習が終わる。
鎌田はあいつに向かって、未だ授業のレベルの低さをぐちぐち話していた。
「こんな無駄な時間を過ごさせて、俺が落ちたらどうしてくれるんだろうな」
「鎌田君、ちょっと」
「Aはいいよ、レベルもあっているだろうし」
「おい」
俺は、その時自分が何を考えていたのか、うまい言葉にできない。
溜まってしまったフラストレーションをその場でぶちまけただけかもしれないし、
もしかしたら、あんな男の側から、あいつを連れ出してしまいたかったのかもしれない。
「……そないに賢いんやったら来ないでくれへんかな」
「ムラカミ……」
「うるさいねん、こっちは馬鹿なりに必死で勉強しとる。時間の無駄なんやろ。文句言ってるその時間はどうやねん」
自分が言った言葉はだいたい覚えているけれど、
その時の鎌田の顔とか、鎌田が何を言ったかとか、そういうものは、もう全然覚えていない。
「人のこと見下してることちゃんとわかってんねやろな。周りに迷惑かけとるってちゃんと気づいてんねやろな」
見ていなかったのかもしれない。
聞いてなかったのかもしれない。
ただ、止まらなくて。
「ヒナ、やめとけ」
後ろからそんな声が聞こえて、ハッとした。
「………楽しそうやな。アホの振り」
俺はそんな一言だけをあいつに投げ捨てた。
あいつの表情も
よく覚えていない。
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作者名：猫彦 | 作成日時：2021年2月20日 11時
