DUSTBOX0.0 (ページ21)

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アンバー　4 ページ21

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アイスを食べ終わったらもう、隆平くんの家から帰らないといけない気がした。

大学生でかっこいい隆平くんの、一人暮らしなアパートから、田舎から一歩も出たことがないようなママのいるわたしの家に。

わたしはそれが嫌で、少ない残りをゆっくりと齧りながら食べた。

溶けたアイスは棒を伝い、手を汚し、それでは足りぬようにわたしの紺色のスカートに白い染みを作った。

「スカート汚れてるやん、早よ食べ」

何も言わず、何も聞かずに同じ甘い香りのする部屋にいた彼がそう言ったので、わたしは最後の一口を口の中で溶かす。

スカートの染みが乾き、紺色の布に無様に浮かび上がる。

「軽く洗っておく？すぐクリーニング出せへんやろ」

隆平くんに促され、わたしはゆっくりと立ち上がる。わたしよりずっと大きい身体が小さな衣擦れの音を立てて近づいてくる。

彼の太い指が、わたしのスカートにそっと触れた。

心臓が早く鳴っていた。

ベタベタに汚れた手では何も抵抗などできず、膝立ちになってわたしの腰のファスナーを探る彼のつむじを、見つめていた。

息を飲んだのは、わたしだったのか、彼だったのか。

散らかった部屋で彼の手がわたしのスカートを、

「……あかんやん、嫌がらんと」

「だって！」

だって。

その後に何が続くつもりだったのか、言葉にしようとすると何故だか涙が出そうで、わたしは顔を上げた彼の目を見れなかった。

彼がわたしの腰から手を離した。

立ったまま固まるわたしに目を細めて微笑んでいる。

「手、洗っておいで」

優しそうな大人の声がする。隆平くんはわたしにキッチンの流しで手を洗わせた。

「これやったら大丈夫かな？」

彼が差し出した灰色のハーフパンツを、スカートの下から履いてみる。

腰の紐を固く縛れば、なんとか履けそうだった。

そしてスカートを脱ぐと、彼は「短パンやのに七分丈みたいやな」とケラケラ笑った。

彼がスカートの染みを取っている間、わたしは手持ち無沙汰で、彼の部屋にあるぴったりと閉じられたふすまを、見つめる。

「この奥にはなにがあるの？」

「え？………ああ。そこは物置」

「入ってもいい？」

「あかん」

人を怒らせてしまった時の、嫌なモヤモヤとした気持ちが湧き上がる。

「……散らかっとるから、絶対、だめやで」

隆平くんはわたしのスカートを几帳面にハンガーにかけた。水に濡れて暗くなった紺色が、暗闇にわたしを連れて行ってしまいそうだった。